「女性社員が何を考えているか、結局、わからない」
このような悩みを、多くの企業から聴きます。
これは、女性活躍推進の施策を実施して数年が経つにもかかわらず、効果が「イマイチ」見られないからこそ出てくる言葉だと思います。
「女性管理職を打診したが、断られた」 「バリバリの営業社員が、子どもが生まれたら働かなくなった」 「28歳位になると、女性が次々と辞める」 「女子学生は制度のことばかり言って、やる気が見えない」 |
制度や施策はあるのに、なぜか効果が出ない。
会社側では、「女性たちは活躍なんてしたくないんじゃないか?」と疑問視する声も上がり、頭を抱えている状況・・・。
スリールは約1万人以上の若手・女性に研修や講座をおこなってきました。その中で、見えてきたのは女性たちの「思考特性」と「両立不安」です。
形だけの施策に手をかけるのではなく、女性たちの特性や不安に寄り添い、それを解消する施策を実施しないと、効果が出ることはありません。
施策の効果が出ない原因を「女性のせい」とせず、是非そのような状況を生み出す背景を知ってください。
「女性の特性なんて知るのは面倒臭い」?
いえいえ、女性活躍はダイバーシティの第一歩です。
男性中心の職場環境を、多様な人が働ける環境にすることが、組織を強固にしていくヒントに繋がります。
今回は4回連続の記事で、女性の思考特性を紐解いた「脳内構造」について、海外の先行研究と照らし合わせてご紹介します。8年間、現場で女性たちの本音に向き合ったスリールが、独自で開発したメソッドです。
女性たちは「周りに役に立ちながら、しっかりと働きたい」と考えている人が多いです。
是非、女性活躍やダイバーシティ推進、そして、組織のパワーアップのヒントとして記事を活用してください。
(本記事で書いている内容は、あくまで傾向値であり、全ての女性に該当するものではありません。「全ての人は多様である」というダイバーシティの視点を持ちながらも、課題の解消の為に分かり易く伝えている点をご了承ください。)
女性の脳内構造とは?
スリールが2017年に行った調査では、90.6%もの子育て前の働く女性が「子育てをしながら働き続けたい」と回答しました。
また、92.7%が「仕事と子育ての両立に対して不安」を感じ、その不安から「退職・転職」を考える人は50.4%もいます(両立不安白書)。
なぜ、「不安」だけが原因で、転職・退職を考えるのか?
この現状の理由を、理解できていない人事部の方が、多いのではないでしょうか。
その説明をする際に用いるのが、「女性の脳内構造」の図です。
女性の脳内構造 1.キャリア 2.プライベート(結婚・子育てなど) 3.周囲との関係(家族・職場など) |
「仕事を頑張りたい」というキャリアのこと。「結婚・子育てどうしよう?」などのプライベートのこと。そして、「周りに迷惑をかけてはいけない」という周囲との関係。女性の多くは、これら3つを同時に考えています。
また、少し先のことを「先読み」し、完璧に「120%」でやろうと考える傾向があるのです。更に情報を「整理」することや、人へ依頼する「交渉」をすることが苦手な方が多く、1人で悩んで抱え込んでしまうケースは少なくありません。
ではなぜ、この脳内構造が「『仕事と子育ての両立への不安』から仕事を諦める」という思考に繋がっていくのか。職場での状況を踏まえてご説明をしていきます。
ある営業の部署のAさん(入社5年目・28歳)。仕事も目の前のことにしっかりと取り組んでいて、クライアントからも信頼が厚い。上司も、そろそろAさんをリーダー職に就かせたいと考えているようです。上司は「最初からいきなりリーダーだと難しいが、サブもつけてフォロー体制も作ってやろう」と思い、しっかりと環境も整えています。色々と考慮をした上で、ある日Aさんとの面談でリーダーを打診してみました。
上司:Aさん、もう5年目だし、リーダー職をやってもらえないか?サブもつけるよ。 Aさん:私には・・・無理です。 |
こんなに期待をかけて、考慮をして伝えたのに・・・。なぜ良い返事が聞けなかったのでしょうか。
Aさんはこのように考えています。
Aさんの脳内構造 1.キャリア:仕事を頑張りたい 2.プライベート×先読み:リーダーをやり始めたら、忙しくなってしまうのでは?そろそろ結婚や子どもの事を考えたいし。うちの会社にはワーママで営業のリーダーはいないし…。 3.周囲との関係×120%:失敗したらどうしよう?上司の期待に応えられないのではないか?部下の指導なんてできるかな? |
仕事は頑張りたいけど、プライベートを先読みして「結婚や子ども」への時間を作ることを考え、周囲の期待を気にして、迷惑を掛けないようにと考えます。そうすると、仕事へのモチベーションはありながらも、完璧にできないと考えて、諦めてしまうのです。
このように、仕事が好きでリーダー職を目指したいと思っていたとしても、プライベートや周囲との関係性を考えて、諦めてしまうという実態があります。スリールの調査では、「求められればマネージャーを経験したい」と答えた女性は66.5%にも上りました。こういったキャリアアップを考えている女性たちが、本当に活躍するためには、この脳内構造を理解した対応を行う必要があります。
企業や上司が認識していくべきポイントは、この脳内構造の「キャリア・プライベート・周囲との関係」の3本軸を理解した上で、マネジメントを行う必要があるということです。
例えば、企業がおこなう研修でも、キャリア面のことだけを伝えるのではなく、プライベート面も含めたキャリア研修を行う必要があります。3本軸について整理をして、自分はキャリアをどうしていきたいのか?そのキャリアとプライベートを実現する上にはどんな壁があるのか?実現の為にはどのように周囲を巻き込む必要があるのか。を全て考え、それを実現するスキルを伝えることで、自律的に働き続ける人が増加します。
プライベートも考慮した対応が重要
1:1の個別マネジメントの面でも、考慮が大切です。目の前で悩んでいる部下は、仕事のことだけではなく、プライベートや周囲との関係についても考えていることを理解してください。仕事に対しての不安だけではなく、周囲との関係性はどうか?プライベート面はどうか?などもヒアリングして、部下の本意を聞いていきましょう。
「どうやって、マネジメントでプライベートのことを聴けばよいの?」「セクハラだと思われたくない」と、困惑してしまう上司の方も多いかもしれません。
そんなに重く捉える必要はなく、顔を見て元気がなさそうだったら、「最近どう?」「土日は何していたの?」などと日常の些細なことから話しかけてみましょう。そして、プライベートがあるのは女性だけではありません。全ての社員にあるものです。全ての部下とこのような声かけができる関係性になると、「実は親が入院してしまって・・・」「最近体調が悪くて寝込んでいました」「パートナーの妊娠でいろいろ大変で・・・」など、会社の中では見えなかった部下の状況を知ることができます。女性に限らず、全ての部下の状況を把握することで、日々のマネジメントがやり易くなり、部下との関係性も良くなっていきます。冒頭にお話しした、「女性活躍はダイバーシティの第一歩」という点。女性視点でマネジメントを行うと、実は他の部下のマネジメントも上手くいく近道になるのです。
「昔は、プライベートなんて聴かなくても良かったのに…。面倒くさいなぁ。」そんな風に思われるかもしれません。
でも実は昔も、上司は部下のプライベート面を考慮していたんです。
高度経済成長期の時は、会社が「家族」のような役割だったので、社宅で一緒に住んでいる部下の奥さんや子どもを日常的に目にしたり、社内の家族運動会などの行事に来ている家族の姿を目にすることで、ある程度の状況が分かっていました。また飲み会の席でも家族やプラベートの話をしながら、何となく上司が部下の状況を把握できていたということがありました。
昔のように自然にプライベート面を知れる環境が無くなった今、また新しいやり方を作り出す必要があるのです。それが会社のファミリーデーだったり、1on1だったりします。
上司自身が動いて、部下のプライベートも含めて知っていかないといけない。上司にとっては、確かに大変な時代です。
でも、女性の脳内を理解した上で、部下を思いやった対応をしていけば、関係性をしっかり構築することができます。また女性視点でのマネジメントを考えると、自然と他の部下へのマネジメントにも繋がってくるのです。
是非、多くの部下と良い関係性を創るヒントになるという視点で、この4回の連続記事を最後まで楽しんでご覧ください。
次回のテーマは「なぜ女性はリーダーに手を挙げないのか?」。
キャリアにまつわる先行事例から解説をしていきます。
是非、次回も楽しみにしていてください。
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