コラム

ありたい姿を見つめ直す「ライフキャリア」とは? ライフキャリアを考えるヒントになるキーワード3選

「ライフキャリア」という言葉を耳にしたことはありますか?職業や企業内での経歴だけでなく、家庭や趣味、地域活動など多様な関わりの中での生き方を表す「ライフキャリア」に現在注目が集まっています。自身のライフキャリアを考える上で、ぜひ知っておきたいキーワードを厳選してご紹介したいと思います。

公開日:2019.03.25更新日:2022.06.14staff

ライフキャリアとは

ライフキャリアとは、企業で働く際の狭義的なキャリアだけでなく、家庭や地域との関わり、趣味などの日々の生活や社会的活動における多様な役割を含めたその人の「生き方」全体を表す言葉です。
一般的に「キャリア」は職業や企業内での経歴のことをさす言葉ですが、それ以外の様々な経験を通した生涯にわたる生き方を指していることに特徴があります。
職業や仕事での「ワークキャリア」と日々の生活や社会的活動における「ライフキャリア」、双方のキャリアにおいて「自分のありたい姿」を見据えてキャリアプランを立てることが重要であるという考え方が広まっています。
本記事では、ライフキャリアを考える上でぜひ知っておきたい理論や概念をご紹介していきたいと思います。

 

ライフキャリアデザインとは

ライフキャリアデザインとは、将来の自分の「ありたい姿」を実現するためにどのような働き方や家庭、社会的活動を行うべきかを考え、目標設定を行い、実現に向けて設計(デザイン)することをいいます。

 

1.ライフキャリアと人生100年時代

ライフキャリアに特に注目が集まるようになった背景の一つに「人生100年時代」があります。ベストセラーとなったリンダ・グラットン著の「ライフシフト」や政府の「人生100年時代構想」が火付け役となり、現在ではビジネスパーソンを中心に多くの人々から注目を集めています。
リンダ・グラットンは人生100年時代という言葉を用いて、今後世界的に長寿化によって100歳まで生きることは珍しくなくなり、これまでの人生設計のモデルとは異なる新しい「生き方」が必要であるということを提言しています。日本は特に長寿化が進んでおり、「2007年に日本で生まれた子どもの半数は107歳よりも長く生きる」という予測もされているのです。
人生100年時代がどのようにキャリアデザインに影響を与えることが予想されているのか、さっそくご紹介していきます。

 

人生100年時代におけるライフキャリア

これまでの人生80年を想定した社会では、10〜20代に教育を受け、20〜60代に仕事、60代に引退し、老後の余暇を楽しむというキャリアプランのモデルがありました。しかし、人生が100年に延びることを想定する場合には、このようなモデルは成り立たないことが指摘されています。
人生100年時代では、前述のような単線的な3ステージ型のキャリアプランではなく、マルチステージでキャリアプランを考える必要があります。副業や転職、学び直しを何度も行うことで様々な職業を経験することができるようなワークキャリアの変化、仕事だけでなく家庭生活やボランティアなどの社会的活動によるライフキャリアの構築などを視野に入れたキャリアデザインが必要です。

マルチステージのキャリアに加わる3つのステージ

これまでの3ステージ型のキャリアプランに加えて、マルチステージのキャリアには新たに3つのステージが加わります。

①エクスプローラー
人生の意味や自分探し、世界を知る期間を指します。例)旅、子育て、ボランティア、インターンシップ②インディペンデント・プロデューサー
事業活動自体を目的とし、試行錯誤しながら未来を探索する「プロトタイピング」を通じて、学習を深めます。例)起業、個人事業主

③ポートフォリオ・ワーカー
異なる種類の仕事や活動に同時並行で携わる時期のことをいいます。
例)会社員をしつつ休日にカレー屋さんを営む、退社後に地域のスポーツチームのコーチをする、など。

これまでの3ステージ型にもあった教育、仕事に上記の3つを加えた5つのステージの中で行ったり来たりを繰り返すことによってこれからのキャリアは形成されると考えられています。趣味や家庭生活、社会的活動に専念することもインプットを得たり、自分自身と向き合ったりする時間としてキャリアを形成する一つの要素になり得るのです。
また、5つのステージを経験する順番は人次第であることから、これまでよりも一人ひとり多様化したキャリアが生まれやすくなることが予想されます。それに伴って年齢とステージが伴わないことも増えていくことでしょう。

 

人生100年時代における3つの見えない資産

長寿化する社会において、マルチステージのキャリアを実現させるには何が必要になるのでしょうか?グラットンは、3つの見えない資産を持つことを提案しています。


①生産性資産
長年の経験から培ってきたスキルや知識のことを言います。はじめに身につけたスキルや知識だけで生き抜こうとするのではなく、新しいスキルや専門技能を身につけ続けることが重要です。②活力資産
心身ともに健康であることや友人や家族と良好な関係が築けていることを指します。③変形資産
自分自身をよく知った上で新しい経験や挑戦を歓迎する姿勢を持ち、多様性に富んだ人的ネットワークを持っていることを言います。

人生100年時代を迎える現代に、ライフキャリアを考えるにあたってどのようなことを意識すれば良いかについてここまでご紹介してきました。長寿化によってどのようにキャリアはマルチステージ化するか、マルチステージ化したキャリアパスの中でどのような資産が必要になるかがお判りいただけたかと思います。

 

2.ライフキャリア・レインボー

ライフキャリア・レインボーは、1950年代にキャリア教育の研究者であった米国のドナルド・E・スーパーが発表した理論です。
ライフキャリア・レインボーでは、年齢役割(ライフロール)場面(ライフステージ)の組み合わせによってライフキャリアが成り立っていると考える理論です。私たちは、生涯にわたって、家庭や学校、地域社会、企業など様々な場所において経験や役割を積み重ねてキャリアを形成していきます。
ライフキャリアを年齢・役割(ライフロール)・場面(ライフステージ)に分けて図式化すると、下図の虹のような図で表すことができることからライフキャリアレインボーという名がつけられています。ライフキャリア・レインボーでは、役割(ライフロール)は8つに、場面(ライフステージ)は5つに細分化されます。

8つの役割(ライフロール)


①子ども

自分自身は未熟であり、家庭の中で保護されながらほとんどの時間を親と共に過ごします。年齢が若いうちは大半をこの役割が占め、成長に伴ってこの役割から離れていきます。②学生
小学校〜大学までの学業に取り組むことを言います。③職業人
アルバイト・会社員・自営業に関わらず「働く」という行動を行う人をすべて「職業人」と指します。④配偶者
夫や妻の役割のことを指します。法律上の夫婦でない場合も、生活を共にするパートナーとしてこの役割に当てはまります。

⑤家庭人
掃除・洗濯・食事作り・買い物などの行動を行う、家族の一員としての役割のことを言います。家庭生活を保ち続けるためにそれぞれが役割を担っています。

⑥親
子どもを持つと「親」の役割が加わります。子どもに対して最低限の生活の保障・教育を行い、子どもを養育する義務を持ちます。

⑦余暇人
スポーツや文化活動などの趣味を行い、楽しむための役割のことを言います。

⑧市民
社会の一員として、利益を求めず社会貢献のために行動を起こす役割を指します。ボランティアや子どものPTA、地域活動などがこれにあたります。

 

5つの場面(ライフステージ)


1.成長段階(0〜15歳)
学校生活や家庭での家族との関係によって、自分自身を形成し知っていく期間です。「仕事」に対する関心や積極性を高める時期でもあります。
2.探索段階(16〜25歳)
学校生活や家庭、仕事において、その経験を元にトライ&エラーを繰り返し成長する時期です。生涯の仕事を模索する時期とも言われます。3.確立段階(26〜45歳)
生涯の仕事について模索し続けることで、やがてキャリアビジョンが明確となり、その仕事における専門性を高める時期を言います。4.維持段階(46〜65歳)
これまでに得た経験や地位を守る時期を指します。

5.下降段階(65歳以上)
仕事をはじめとする活動を、精神的・肉体的な衰えから引退する時期を言います。趣味を楽しんだり、退職後に新しい役割を得るなどして、「セカンドライフ」を謳歌する時期でもあります。

これらの8つの役割(ライフロール)と5つの場面(ライフステージ)の組み合わせによって、私たちのライフキャリアは一人ひとり異なるキャリアを描いていくということなのです。

 

女性のライフキャリア・レインボー

女性は出産や子育てなどのライフイベントの側面から、ライフキャリア・レインボーを用いて自身のライフキャリアを考えることが特に有効であると言われています。ライフキャリア・レインボーは、年代ごとにライフロールの数や役割の大きさ、期間が変わるのを図式化することで俯瞰的に見ることができます。ライフイベントに関する不安が多い女性にとって、ライフキャリア・レインボーは自身のキャリアを見直す良いツールになり得るでしょう。

 

人生100年時代を踏まえたライフキャリア・レインボーを築こう

上記のようにスーパーは年代を5つのライフステージに区分していますが、今後寿命が伸びて80歳まで働き続けることが当たり前になることを想定した場合、これらの区分がずれ込むことや必ずしもこのライフ・ステージ通りに進まないことも考えられます。人生100年時代であることを頭の隅におきながら、ライフキャリア・レインボーを描いてみましょう。

 

3.ライフキャリアの「4つのL」とは

「ライフキャリア」を提唱したサニー・S・ハンセン教授は、著書「統合的人生設計(Integrative Life Planning )」において、「キャリア概念の中には、家庭における役割から社会における役割まで、人生における役割をすべて盛り込まれている」と述べています。
人生の役割を「4つのL」、つまり労働(Labor)、学習(Learning)、余暇(Leisure)、愛(Love)の4つの役割の組み合わせをパッチワークにたとえ、一人ひとりがオリジナルの役割の組み合わせを持っていると述べています。

ハンセンは、「ライフプランをデザインする際には、より全体的な視点を持ち、家庭、組織、社会における自身の位置付けから果たす役割を見つけだすべきである」と提言しています。その中でも、総合的ライフ・プランニングにおいて6つの重要な課題があると指摘しています。

統合的ライフ・プランニングにおける6つの重要課題

1.グローバルな視点から仕事を探す
2.自分の人生を「有意義な全体」として織り上げる
3.家族と仕事を
4.多元性と包括性を重んじる
5.内面的な意義や人生の目的を探る
6.個人の転機を組織の変革に対処する

 

この重要課題からもわかるようにハンセンは、個人のライフプランを超えて社会全体としてのゴールも視野に入れた提案をしています。ハンセンは女性の人権運動にも積極的であったことからこのように述べているのではないかと考えられています。

 

まとめ

これまでにライフキャリアデザインに関する3つの理論をご紹介してきました。最後にもう一度おさらいしていきたいと思います。
1.人生100年時代
長寿化が進んだことによって、教育・仕事・引退の3ステージ型のキャリアプランから副業や転職、学び直しを含めたマルチステージのキャリアプランが必要となります。仕事だけでなく家庭や地域活動などのライフキャリアの充実も重要です。
2.ライフキャリア・レインボー
年齢・役割(ライフロール)・場面(ライフステージ)の組み合わせによってライフキャリアは成り立っており、虹のような図によって示すことができます。キャリアにおいて、ワークキャリアやライフキャリアのどちらか一方に偏るのではなく、ライフステージによって各役割が変化していくことが示されています。
3.4つのL
ハンセンは、4つの人生の役割として労働(Labor)、学習(Learning)、余暇(Leisure)、愛(Love)を示しました。これらの組み合わせをパッチワークにたとえ、一人ひとりがオリジナルの役割の組み合わせを持っていると述べました。

これらの理論を頭の片隅において、ご自身のキャリアビジョンを一度見つめ直してみてはいかがでしょうか?ワークキャリアだけでなく、ライフキャリアも組み合わせたキャリアプランを考えることで、より多様であなたらしい未来像が見つかるかもしれません。

 

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