コラム

仕事と子育て「両立不安白書」 働く女性のアンケートから見えた「両立不安」の正体とは?

公開日:2024.03.21更新日:2024.08.27staff

働く女性が抱く仕事と子育ての“モヤモヤ”

仕事と子育てのモヤモヤについて弊社が2017年に実施した調査では、「仕事と子育ての両立について、不安を感じた経験はありますか?」という質問に対し「はい」と答えた女性は92.7%に及びました。将来に対して不安を感じることは年齢や性別を問わず当たり前ですが、この結果からは働く女性のほとんどが仕事と子育ての両立に不安を抱えている現状が明らかとなりました。

実際日本ではまだ働き続けたいのに仕事を諦めたり、子どもが欲しいのに子どもを持つことを諦めてしまう女性が少なくありません。2021年に実施された「第16回出生動向基本調査」の結果では、結婚持続期間 10 年未満の夫婦において、理想子ども数・予定子ども数は僅かながら減少を続けており、予定子ども数の平均値は初めて2人を下回りました。

理想の子ども数の分布をみても、少ない子どもを理想とする夫婦の割合が増え、「予定子ども数1 人」の割合が 15.0%に到達、「子どもは持たない」という回答を含め た「予定子ども数1人以下」の夫婦が全体の2割を超えています。

このように、働く女性が仕事と子育ての両立に直面する前から不安を抱えてしまうことを、弊社では「両立不安」とネーミングし、調査を行ってきました。なぜ仕事と子育てを両立するための制度や施策は充実してきているのに、女性は「両立不安」を感じてしまうのでしょうか。その理由を紐解くため、調査結果を「両立不安白書」としてまとめ、広く知っていただくためPDFでの配布を行なっています。今回はその内容についてご紹介します。

 

「両立不安」の正体

「両立不安」を抱えている女性は具体的にどのようなことに悩んでいるのでしょうか?また「両立不安」を抱える女性に共通する傾向はあるのでしょうか?私たちは調査の結果から、「両立不安」を抱えている女性の①仕事、②家事・子育て、③時間という3つの項目に対する意識をまとめてみました。

 

①仕事に対する意識

ここで注目しておきたいのは、「現在の仕事は充実していますか?」という質問に対して「はい」と答えた人が80.3%、「求められればマネージメント(管理職)を経験してみたい」という項目に対して前向きな回答した人が66.5%だったという結果です。

つまり「両立不安」を抱えている女性は決して仕事に後ろ向きな訳ではなく、むしろ仕事も頑張りたいと考えているということが分かります。実際アンケートでも「子育てによって仕事に全力を傾けられないことがストレスにならないか不安」、「今のキャリアが変わるのではないかと不安」というコメントが挙がりました。

②家事・子育てに対する意識

「子どもが生まれたら、自分が家事や育児をメインでやることになると思う」という質問に対して、「そう思う」と答えた女性は82.4%でした。多くの女性が「家事・育児の主担当は自分」という意識を持っていることが分かります。アンケートのコメントでは「夫が長時間労働で帰宅が遅く、子育ての協力をあまり見込めない。自分ばかりに負担や責任が増えるのでは?」といったように、「夫はあくまでサポート役」という意識が強い様子も見てとれました。これまでの仕事に加えて、家事・育児で新たな負担が増えた時、「自分はそれに耐えられるだろうか…」と悩んでいる女性の姿が伺えます。

③時間に対する意識

「今の仕事で成果を出すためには『時間』をかける必要がある」「子育てをする上では『時間』をかける必要がある」という2つの質問に対し、それぞれ「はい」と答えた女性は77.3%と94.0%と、どちらも高い結果となりました。つまり多くの女性が「仕事にも子育てにもしっかり時間を確保したい。」と考えつつ、「1日は24時間」という制約の中で「どうやってタイムマネジメントをすれば良いか分からない…」と葛藤しています。

こうした結果から分かるのは、「両立不安」を抱える女性が「仕事も家事も子育ても、しっかり自分でやらなければならない」という意識を持っていることです。しかしその一方で、「自分が全てをこなすスーパーウーマンになるのは無理」という意識もあり、2つの思いが女性の中で“モヤモヤ”を生み、悩みを複雑化させてしまっている状態だと言えます。

 

「両立不安」を生み出すものは何か?

それでは女性がこうした「両立不安」を抱くきっかけには、どのようなものがあるのでしょうか?「不安を感じる要因になったシーン」を質問してみると、1番多かったのは「会社の中での働き方・子育て中の社員を見て」という回答で73.3%。具体的には「夜中まで働いているのが当たり前、頑張るのが当たり前の会社。このままでは子育てはできない。」とう自分自身の働き方、「過去に育休を取った人がいたときに周りが大変だったという話しを聞かされた。」といった上司とのコミュニケーション、「ワーキングマザーがスーパーウーマンみたいな人ばかり。」といった先輩の姿が、要因として挙げられました。

次に多かったのは「ニュースなどの報道を見て」という回答で39.9%。「待機児童問題があるため、保育所に預けられず働き続けられないのではないかと思う。」「メディアが報じるワーママの現状は、本当に大変そう。解決策のないまま、報道が終わったりする。」といったコメントが見受けられました。

その他にも女性は公共の場で泣いている子どもを見たり、両親やパートナーの何気ない一言から不安を感じることもあります。周りで見たり聞いたりしたことから「仕事と子育ての両立はこうあるべき。けれど自分には無理かもしれない…。」と「両立不安」を感じているようです。

 

「両立不安」を抱える女性の選択

「仕事も子育ても頑張りたいけれど、私はスーパーウーマンにはなれない…。」そんな「両立不安」を抱えた女性は、将来の仕事・子育てに対してどのような選択を取るのでしょうか?

仕事に関して、「転職/退職を考えたことがありますか?」という質問に「ある」と答えた女性は50.4%。約半数の女性が少なくとも1度は転職/退職を検討していました。中には「仕事は楽しかったけれど両立できる環境ではなかった。先延ばしにして妊娠しにくくなる方が後悔すると思い、退職をした。」というように、実際に転職/退職をして行動に移した方も。

子育てに関しては、「妊娠/出産の時期を遅らせることを考えたことがありますか?」という質問に「ある」と答えた女性は46.6%。こちらも約半数という結果です。「仕事で大事なポジションを任されているため、今すぐ子どもがほしいと思えず、結婚することにも踏み出せない。」というコメントもあり、「両立不安」は子育てだけでなく結婚の時期にも影響を与えていることが分かりました。

 

「両立不安」の解消に向けて

仕事にやりがいを感じている優秀な女性が転職/退職してしまうことは、企業にとって大きな損失です。また、子どもが欲しいと思いつつ女性が妊娠/出産を控えてしまうことは、少子高齢化に悩む日本にとって大きな課題です。「両立不安」の解消は、本人にアプローチするだけで解決する問題ではありません。企業や国が一丸となって社会全体の課題として取り組んでいく必要があります。

 

弊社でもそんな「両立不安」を抱える女性をサポートすべく、多種多様な研修をご用意しています。内容は社員本人の「意識変容」「行動変容」を促すものから、マネジメント職に対して子育て社員の背景理解を促し「組織変容」を促すものまで多岐に渡ります。詳細について知りたいという方はぜひお気軽にお問い合わせください。

調査結果をまとめた白書はこちらからダウンロードいただけます

https://sourire-heart.com/ryoritsufuan/

 

参照URL:国立社会保障・人口問題研究所.「第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」.https://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou16/JNFS16_Report04.pdf,(参照 2024-02-04)

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