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【セミナーレポート】ネスレ ヘルスサイエンス カンパニーの事例に学ぶ!管理職が育児期社員の疑似体験をする「育ボストライ」の効果とは

公開日:2026.02.05更新日:2026.02.05sourire staff

多様な背景を持った社員が増える中で、管理職は背景の理解や人材活用に頭を抱える管理職が増えています。多様な背景を理解したいと思いつつも、自身が体験したことのないことはイメージ・理解しづらいのは当たり前のことです。

弊社スリールの体験型プログラムである育ボスブートキャンプ」「育ボストライ」は、管理職が育児期社員の疑似体験をすることで、働き方に制約のあるメンバーについて理解を深め、チームメンバーそれぞれの多様な状況に気づくことのできるプログラムです。

「育ボストライ」をご提供・実施した、ネスレ日本株式会社 ネスレ ヘルスサイエンス カンパニー 人事・広報統括部長の岡野美佳氏をゲストに迎え、弊社代表堀江と共に「育ボストライ」プログラムの実施事例と効果について語っていただきました。

本レポートでは、2025年9月に開催されたウェビナーの内容をお伝えします。


■【第一部】管理職にDEI理解と「越境学習」が必要な理由

前半は弊社代表堀江より、管理職にDEI理解と越境学習が必要な背景として、前提についてのインプットがありました。

DEIが求められる時代的背景と企業の課題

2015年頃からESG投資の流れがあり、企業価値向上には非財務情報、特に環境・社会・ガバナンス(ESG)の要素が不可欠となりました。日本では、コーポレートガバナンスコードの改定により、女性や外国人、中途採用者の管理職登用目標設定がプライム市場企業に課せられ、2023年3月期決算からは有価証券報告書で女性管理職比率、男性の育休取得率、男女間賃金格差の開示が義務化されています。

世界的な潮流としてDEIの重要性が高まる一方で、「効果的な取り組みができていない」「経営層の意識はあっても管理職の課題意識が薄く、施策が広がらない」といった悩みが多くの企業で聞かれています。

人事制度が会社全体に広がっていくためには、人事制度を作っただけでは不十分で、5つのプロセスが必要であると言われています。

管理職の意識/行動変容の鍵:「アンラーニング」と「越境学習」

管理職の意識と行動が変化するためには、これまでの成功体験や固定観念をいったん手放し、新しく学び直すアンラーニング(学びほぐし)”が必要です。

※アンラーニング(unlearning・学びほぐし)とは:
これまで学んできた知識や価値観を手放し、新しく学び直すことを意味します
▶アンラーニングについての詳細はこちらの記事をご覧ください:
管理職にリーダーとしての変革を促す「アンラーニング」

アンラーニングに重要な3つのポイントとして以下の3つが挙げられます。

  1. 限界認知経験:今までのやり方では通用しない“自分の限界”を感じる
  2. 越境・職場外経験:これまでと違う立場や視点に立つ
  3. 内省支援/学習記録行動:自分の中の“当たり前”を問い直す

育ボストライは、このうち「越境・職場外経験」を促すものであり、特に「会社」と「家庭」での生活(育児や介護、家事)を往来する”越境学習”が中心です。

越境学習とは、自分にとって居心地のよい慣れた場(ホーム)とは異なる、居心地が悪い慣れない場・ルールが通用しない場(アウェー)に身を置き、違和感や葛藤を通じて新たな視点・学びを得る経験のことを言います。

育ボストライ」とは

育ボストライは、アンラーニングのプロセスを組み込み、役員・管理職が育児体験を行い、働き方・ダイバーシティマネジメントをリアルに体感するプロクラムである「育ボスブートキャンプ」のライトバージョンとして開発されました。

本プログラムでは、企業の管理職の方に、1週間16時退社を行い、毎日食事作りなどの家事を実践するという【制約体験】をしていただきます。

この実践の後に、社内の多様な社員の状況を聴くことで、様々な社員がいろんな背景や事情を抱えながら働いていることを知る【ダイバーシティインタビュー】を実施いただきます。

最後に、組織の課題に向き合い組織変革・価値向上を目指す【課題解決プレゼンテーション】を実施していくというプログラムです。

それでは、実際に育ボストライプログラムを導入いただいたネスレ日本株式会社 ネスレ ヘルスサイエンス カンパニー様の事例をご紹介いたします。


【第二部】ネスレ日本株式会社 ネスレ ヘルスサイエンス カンパニーの「育ボストライ」プログラム実施事例

◾️ネスレ日本株式会社 ネスレ ヘルスサイエンス カンパニー 人事・広報統括部長 
岡野美佳 氏

2004年にノバルティスファーマに新卒入社し、事業部のM&Aでネスレ日本に転籍。ネスレ ヘルスサイエンス カンパニーにて医療用栄養補助食品の営業職として経験を積み、営業企画部での研修・企画・営業DX業務、グローバル本社勤務、コマーシャルエクセレンス部マネジャーを経て、2025年より人事・広報統括部部長に就任。営業現場と本社機能の両面からヘルスサイエンス事業の発展と組織成長に携わる。

育ボストライ導入の経緯

堀江:育ボストライ導入の経緯にはどのような社内の課題感があったのでしょうか?

岡野氏:日本全体として多様な背景を持つ社員が増える中、社内においてもビジネスを円滑に進めるにあたって、多様な背景の理解や関係性の構築に”葛藤”する管理職の姿が見られたことで、管理職への多様性の理解が急務であると判断しました。

【制約体験】1週間16時退社&料理チャレンジで得た当事者視点

堀江:ネスレ ヘルスサイエンス カンパニーが実践した【制約体験】の詳細は以下の通りです。

1つ目の【制約体験】として、チームで業務調整を行い、1週間16時退社を実行しました。すぐには実践できないため、きちんと準備期間を設け、1か月ほど前からメンバーにきちんと今回のプログラムの経緯説明を行い、タスクを調整しました。いつも出席している会合を部下に任せてプログラムに参加、という方もいらっしゃいました。

そして、18時から食事作りなどの家事を実践しました。時間制約がある生活を体験すること、家庭生活に身を置くことで参加者の意識の変化を測ります。家事の内容は、参加者や家族の状況・ニーズに応じて変更可能で、中には、お孫さんのお世話をした方もいらっしゃいました。

堀江:1週間16時退社の効果や食事作りを体験された部長の皆様の反応はいかがでしたか?

岡野氏:育ボストライの実施が決まった当初、当事者の管理職からは「えー、しんどい」「無理」という反応もありましたが、事前に早い段階から時間をかけて説明を実施することで、実施時には参加者全員が納得したうえで取り組んでいただきました。

いざやってみると、「こんなにリアルに自分に制約が来る経験は初めてだった」という方がほとんどだったようです。

対象となる管理職はほぼ男性で、子どもがいる方・いない方どちらもいらっしゃったのですが、子どもがいる方は、一応「子育ての経験はある」、「家のこともちゃんと手伝っている」と思っている。部下にも育児や介護をしている人がいることは知っている。

そのような方が、実際に自分が16時に仕事を終え、仕事についていろんな心配を抱え、後ろ髪引かれながら退社して、時間制限のある中で食事作りをするという経験をしたことは、本当にインパクトが大きかったようです。

子育てや家事経験があると思っていても、家のことを「手伝っている」という感覚と「当事者意識」の差を痛感したという声がありました。日曜日の家事を「これって仕事じゃないか」と素直に思ったと。同じ生活をしていても、家事や育児に対する当事者意識があるかないかで、経験の背景理解がこれほど違うのかと、私も勉強になりました。

【ダイバーシティインタビュー】での気づき:仕事の波と生活の波

堀江:多様性理解を深める【ダイバーシティインタビュー】では、妊活経験のある男性社員と介護経験のある社員に話を聞いていただきました。妊活で大変というと女性の方のイメージがあると思いますが、パートナーである男性も業務調整や妻の精神サポートなどが必要になります。介護をされている方からは、介護をすることでキャリアダウンにつながってしまったり、普通の働き方であれば疑問を感じなかったような働き方・制度上の課題点についても気づきがあり、「ライフイベントがあっても活躍できる組織とは?」を問い直すきっかけとなったセッションです。

堀江:社員が抱える困難を聞く機会は貴重だったかと思いますが、ダイバーシティインタビューの反応はいかがでしたか?

岡野氏:このセッションは全プログラムの中で最も評価が高かったです。

まさに越境経験で、元気な社員の方々で、見た目では分からない「こんな背景を抱えていたの」という驚きがありました。そのような社員からの本音を聞くことができ、とても貴重な機会となりました。

大きな気づきとして、妊活も介護も「波」があるということです。「波の大きい時と仕事上のイベントが重なったときの上長の対応が肝だ」という話に、皆さんハッとされて自分の行いを振り返っていました。時間制約の体験をした後に話を聞いたこともあり、経験する前には見えていなかった背景・事情があるということを体感しつつ話を聞けたことで、さらに大きな気づきがあったようです。

【課題解決ワーク】越境学習から生まれたアイディアと管理職の変化

堀江:課題解決ワークでは、これまでの体験から、組織を強くし、企業価値を向上させるためのアイディアも出していただきました。課題解決ワークではどのような感想が出ましたか?

岡野氏:これまでの全ての体験(制約体験、ダイバーシティインタビュー)をした上で迎えた最終のセッションだったため、全員当事者意識を持って取り組んでいただいたことで、元々管理職の方々が持っていた「限界認知経験」と相まって、それらが統合された具体的な意見が出ました。

育ボストライの成果と意義:管理職の「限界認知体験・越境学習」で、働き方の”アタリマエ”を問う

堀江:育ボストライを実施した上での「成果」をどのように捉えていますか?

岡野氏:参加した管理職自身と、そのチームメンバーの両方に成果がありました。

チームメンバーに関しては、プログラム後間もないので現在進行形ではありますが、30%のメンバーが「研修を受けた管理職の言動が変わった」と評価しました。残りのメンバーのうち30%はも元々良好な関係で不満はなく、より良い状況が続いているとのことで、非常にポジティブな反応です。

管理職自身に関しては、元々「成果100か、配慮100か」という「0か100か思考」になりやすい方が多かったのですが、「成果か配慮か」ではなく、抱えている状況の中でどうしたら成果を出せるか、そのために必要な配慮は何か、というところで成果を握りながら、背景を深く理解し、個別の事象を理解した上で対応していこうという意識に変わりました。

堀江:改めて育ボストライは、「限界認知体験・越境学習」を行うことで、働き方の”アタリマエ”を問うキッカケとする、というものでした。キーパーソンである管理職の捉え方が変わることで、周囲のメンバーにも良い影響が出たということが確認できたと思います。

多様性理解・対応の鍵は「面倒くさい」を乗り越えること

堀江:育児の疑似体験を通じて「見えないもの(メンバーの背景)が見えてくる」という経験は、マネージャーや会社にとってどのような意義があると思いますか?背景まで知ろうとすることを「面倒くさい」「そこまでしなきゃいけないのか」と感じる方もいると思うのですが。

岡野氏多様な社員の理解と対応は、正直に言ってしまえば「面倒くさい」と思います。具体的に言うと早抜け・中抜け・長期離脱への対応は、管理職からしたら面倒くさい。しかし、それをないがしろにして離職やコンフリクトが起きれば、さらに面倒くさい悪循環が起こります。そのようなイタイ経験を今回の参加者である管理職の方々も大なり小なり経験してきたのだと思います。

今回の育ボストライを通じて、背景の何が見えていなかったのかを知ったことで、マネージャーとして成果を出すために、「無理」なのではなく、「こういうコミュニケーションを取れば、もっと違う方法で前に進めたかもしれない」という選択肢・視野が広がったと感じています。

堀江:理解や対応ははっきり言えば面倒くさい。でも、例えば育児や介護で長期離脱する場合の対応も一度経験してしまえば、同じような事象にも向き合いやすくなります。

管理職向けのダイバーシティマネジメント研修では、面談の際、業務関連の話題で終始するのではなく、「プライベートやサポート環境も含めてキャリアを聞く」ことがポイントだとお伝えしています。育児や介護をしている方にとって、仕事への影響は周りのサポート環境に大きく左右されます。また、今大変なことだけでなく、「長期的なキャリアの展望」を聞くことで、前向きな想いを引き出すことができ、活躍支援へと繋げることができるのです。

1週間16時退社という限界認知経験の意義と可能性

堀江:1週間16時退社という限界認知経験を実施した上での可能性は、どのように感じられましたか?

岡野氏:やはりやってみないと分からないことがあるとの気づきを得たと思います。「自分が必ずやらなきゃいけない」と抱え込まなくても、仕事は良い意味で回る、ということや、そういう状態を作っておくこと(属人化の解消)の大切さが分かり、何かを「手放せた」ような感覚があったようです。

堀江:まさに「ヘルプシーキング(援助要請行動)」ですね。個人が問題を抱えた際に、周囲に助けや支援を求める行動を指します。これは単なる「人に頼る」行為ではなく、チームで成果を最大化するための重要なビジネススキルとして認識されています。

部下から上司・同僚に向けた場面で使用することが多いですが、上司側がヘルプシーキングを実践する(例:自分の弱さ・悩みを見せて、部下に任せる)ことも大切です。マネージャーが全てを背負わなくても、意外と部下に任せられることが見えてきますし、そのような上司を見てメンバーも早めに上司に相談するようになります。実際にそのような変化はありましたか?

岡野氏:はい。有事の際の対応について、起こってから相談・対処を検討するのではなく、事前に「このような可能性があって、その際はこれをお願いしたい」という話をしておく、という一種の自己開示のようなものが、新たな感覚だったようです。

女性活躍・DEI推進を進める上でのキーパーソンを巻き込む伝え方

堀江:最後に、このようなインパクトのあるプログラムを実施するため、キーパーソンを巻き込む伝え方について教えてください。

岡野氏:結論としては、トップダウンで本部長から巻き込ことです。我々の組織は、営業が6〜7割を占めており、産休・育休・介護などの背景を抱える方が多い部署です。営業という部署が顧客を抱えながらもこの取り組みをやることで、組織としての学習能力・影響力を高めていくという点を本部長に説得しました。本部長自身も「今までと同じ考え方・価値観ではいけない」という危機感を持っていたため、上からトップダウンで進めることができました。

堀江:本部長という、利益も現場も回さなければならない方が、実際に実践してみて「できるんだ」ということを伝えていくことの影響力はかなり大きいと思います。本丸から入っていくことはとても重要ですね。

推進に悩みを抱える人事・担当者に向けてのメッセージ

岡野氏:とにかく「やってみる」というところで開ける世界があるということ、そして身近な人に実はいろんな背景の人がいるということを知ること。どんな管理職も多様な社員の理解・活用で困った経験がある。そういった方が今まで解けなかった問いに対して、体験・体系立てたインプット・アクティビティが絡み合い、新たな価値観が生まれるプログラムだと思います。

堀江DEIの取り組みや本プログラムは、単に育児期や介護期の社員のためだけでなく、マネージャー自身を救うためのものでもあります。制約がある人が増える時代に、マネージャーに荷物が集中するのではなく、チーム全体で課題を分かち合い、成果を倍にしていくこともできるという世界観を一度体感してみるということが重要だと思っています。この育ボストライがその貴重な機会となれば幸いです。


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