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【代表ブログ】家族のように見守る保育サポートのガイドラインの必要性

公開日:2014.03.27更新日:2022.03.01sourire staff

前回「【代表ブログ】ベビーシッター事件を受けての想い」でも書かせていただきましたが、いまの子育て世代は、誰からも子育てを教えて貰えていないし、支えてもらう仕組みも弱いという中で、大きな不安を抱えています。
親御さん達の不安や、これからの子育て世代の不安を解消するためには、子ども自身が預けられて「うれしい」と感じてくれる環境整備が必要だと考えています。

子どもを預けて働かざるを得ないのが、多くの親御さんの現状です。
核家族化が進んだいま、「家族のように見守ってくれる」第三者の存在が、カギとなってくるのは当然なのではないでしょうか。
保育者が「家族のように見守れる体制」を、行政には支援していただきたいと思っていますし、ガイドライン化していただくことが必要だと思っています。

また同時に「これから親になる世代の育成」も不可欠です。
子育てを経験した事がない人が親になるのではなく、事前に学ぶ環境づくりが「正しく子育てサポートを選択する」ことにも繋がってきます。

こうしたガイドラインの必要性について詳しく説明する前に、まずは、当社の取り組みについて説明させていただきたいと思います。

 

4ヶ月の家庭へのインターンシップ「ワーク&ライフ・インターン」とは?

スリールでは、ワーク&ライフ・インターンシップという家庭へのインターンシップを実施しています。

これは、「他人を家族にしていく子育てサポート」と、
「これからの大人を育成するキャリア教育」を合わせたもので、
家庭と学生を結びつけるための仕組み化を徹底的に実施しています。

学生には「家庭と子どもを第一に考える育成」を。
家庭には、サービスではなく「関わる」ことをお願いしています。

4ヶ月の間、自分がエントリーシートを提出した家庭で、
学生二人がペアとなって【平日の夜、週1回程度】保育園〜ごはん〜お風呂などを実施します。
それだけではなく、動物園に行ったり、保育園の運動会に行ったりと「ホームステイ」のように家族として関わっていきます。子どもの
対象年齢は2歳〜小3です。

ご家庭には、コミュニティ会員費として月額30,000円+税(月6回18時間)をいただき、学生は育成プログラムを受講することで、交通費のみの支給としています。
家庭にとってみたら、1時間1,000円程度で2人の学生のサポートが得られるようになります。
これは通常のお預かりサービスの半額程度になるため、その代わりに大学生と関わり育成もしながら、共に「育ち合い」をしていくプログラムです。

 

選考と育成とフォローの体制

●インターン生の選考・育成・2人体制

インターンに参加する学生は、お小遣い稼ぎのためではなく、「自分の将来の学びのため」であり、「家庭と密に関わるため」にインターンに参加します。
エントリーシートを書き、将来の為にどれだけ真剣にインターンに臨むかを書いてもらいます。

面談や、研修での態度など、総合的な判断から、インターンを実施する学生を選考し、家庭とのマッチングを行ないます。
お預かりに入る前には、0-5歳の発達過程や、安全確保・小児救急、子どもとの向き合い方などの座学と、実習を合わせて36時間程度行います。
※ワーク&ライフ・講座について

 

実際のお預かりは、2人ペアで行きます。
これは、目を離さない、子どもへの多様な関わり、見張り合うという意味があります。

事故は、「保育者が目を話した時」に起こります。

家事をしていたり、トイレに行っている時も、保育者が1人の場合は目を離す状態が起こってしまいます。2人体制の場合は、そういったリスクを回避することができます。
目を離さなければ、何かにぶつかったり、溺れたり、火事になったり…ということは防ぐ事ができるのです。

また、母親と父親がそれぞれの役割(叱る役、なぐさめる役など)を持つように、子どもに対して多くの価値観を与えていき、より良い関わりを行う為に、2人の違う特性を持つ人が子どもを見守る事を大事にしています。

最後に、「故意で良くない事をする」事を見張り合う作用もあります。
常に2人で行動しているので、何かおかしい事があればすぐに気がつく事ができます。

子育ては1人でするから怖く、大変ですが、2人になるとリスクは回避され、できることも沢山増えていくのです。

またお預かりの中での賠償責任保険と、インターン生側が家庭に行くまでの交通機関などでの事故にも対応している保険の2種類に加入しています。

 

●家庭の選考・関わり

スリールでは有り難い事に、受け入れ待ちが後を立たないほど多くのお申し込みをいただいています。
また受け入れをするご家庭には、スリールの事業に共感し、サービスではなく「関わる」覚悟がある方に受け入れをしていただいています。

関わるとは、プライベートを開くこと。

「子育てサポート」は、子どもの生活の一部に入ることだと考えているので、いつもどの様にお子さんと関わっているのかや、仕事の状況、今後どの様に子どもの成長を考えているのかなど、しっかりと共有をしていただきます。

その為、家庭は説明会を受けた後、初回の訪問でお子さんの状況やご家族の状況をヒアリングし、インターン生が決まったらスタッフと3者で面談を行ない、どのようにお預かりしていくかや、家庭ごとの災害時の対応などを話し合います。

 

また「パパママcafe」と言って、ご家庭のお父さんお母さんの大学生から今に至るまでのお話しをしていただく機会もあります。この事によってインターン生は、ご家庭の方の考え方や子育て感を知り、気持ちを汲んで子どもと対応できるようになったり、一人の人間としてお父さんお母さんに憧れることで、「この人にもっと貢献していきたい」「より近づいていきたい」と想い、モチベーションが上がっていきます。

このように「プライベートを開くこと」で、コミュニケーションがスムーズになり、子どもへの愛情や向き合い方も変化していくのです。

私は今までベビーシッターとして200名ほどの子どもと関わってきましたが、残念ながら事前のお子さんについての情報や、ご家族との共有を取れる仕組みはありませんでした。

毎回が初めましてで、子どもが不安定になっていても、家庭の方には話すことができない…。2年間指名を受けて入っていた家庭のお母さんの下の名前も、お仕事も知りませんでした。
実はこれは、お子さんに慣れているベテランの方やファミリーサポートの方もおっしゃっていました。

お互いの「サービス感」が強まりすぎると、子どもの成長を考えたくても考えられなくなってしまいます。

 

ビジネスで行う場合も、そうでなくても、「子育てはサービスではなく、生活の中の保育である」ことに立ち戻り、プライバシーの保護の配慮をしつつも、子どもの成長を見守れる体制が必要だと考えます。

 

●詳細な報告の仕組みと、毎月のフォローアップ

インターン生は、毎回日報を記載し、事務局とご家庭に提出します。
何時に何を実施したかだけではなく、具体的に子どもがどういった行動をとったか、
楽しかった事だけではなく、困った事・心配なことなど共有します。
たった3時間の出来事を1500〜2000字に渡り報告するインターン生も多く、子どもがどのようにその時間を過ごしたのかが手に取るように分かり、子どもが不安定になったらその後の対応をご家族と一緒に考えます。
この報告により、事務局も随時状況をキャッチアップすることができます。

 

また毎月、約40名のインターン生が集まる会合があります。
ここでは、お預かりについての悩みなどを共有して、「どのように関われば、より子どもが成長できるか」を、同期のメンバーで真剣に話し合います。

この場で、自分たちの子どもへの向き合い方を見直すマインドセットができ、子どもの楽しさや成長の為に、動物園に行ったり、お菓子作りをするなどのアイディアなども生まれてきます。

学生の大学生活での悩みや体調など、インターンを上手く実施できなくなりそうな要因なども、こういった場で顔を合わせてフォローを行っていきます。

 

この会合は子どもについてだけではなく、キャリアを考える場でもあります。
自分の30歳の時のキャリアプランを立てたり、妊娠活動講座、男性の育児休業講座など、自分の将来の可能性を広げる機会を与えながら、今行っている「お預かりのインターン」そのものが、自分の未来に繋がっている経験であるという当事者意識を、自然と持てる効果もあります。

そのため学生達は、真剣にこのインターンに臨む事ができるのです。

 

●親になる教育

インターン生は、「ベビーシッター」の教育をするのではなく、「自分が親になった時の教育」を行ないます。

自分がこの子の親だったら?という視点で、今後の長期的な成長を考えて「叱る」「向き合う」場面も出てきます。そういった関わりがあるからこそ、子どもはインターン生を信頼していきます。

4ヶ月後、インターン生は自分がみていた子どもたちの事を、「自分の兄弟や子どものよう」だけではなく、「自分自身」「自分の鏡」のように感じると答えるようになり、親が子に感じる感情と同じように変わって行きます。

他人でも、若くても、深い愛情を注ぐ事ができる。
実は親も、「資格」を持っている訳ではありません。

あるのは深い愛情と、危険を察する能力です。

目の前の子どもと家庭を愛する仕掛けと、危険を察知できるような育成と仕組みを、
ガイドラインとしてしっかりと形創ることが、子育てサポートにおいて重要だと思います。

 

●まとめ

スリールが実施しているのは、「今に合ったた形の世代間交流」です。
核家族になり、世代間交流が無くなったことで失われた「子育てサポート」「育児体験」「多くの大人との関わり」を、今に合った形で実施しているのです。

 

もちろん、スリールの体制も完璧なものとは言えないかもしれないですが、「こどもの預け合い」や「他人とのコミュニケーション」を長年実施して来なかった日本社会では、これほどのコミュニケーションのサポートを行う必要があると感じています。

しかしながらここまでの体制を整えるのは、人的コストが欠かせません。
なので、スリールも質を重視するために、多くの家庭を受け入れることができていないのが現状です。

子育てサポートへの助成や拡充が増やしながら、「質」つまりは「家族のように見守れる体制」をどのようにガイドライン化していくかを考える事で、誰もが安心して子どもを預けられ、活躍できる社会になると考えています。

 

今回の事件から学び、現状の社会構造を受け止めて、正しい方向に法整備などがされることを強く願っています。

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