[レポート]イベント・最終プレゼン

Break the Bias ~ジェンダーギャップを乗り越えるために私たちができること【過去~現在編】

公開日:2022.04.26更新日:2022.10.07staff

スリールは、国際女性デーを機に現在日本にあるジェンダーに関する課題や背景に目を向け、これからのありたい姿について考えるウェビナー「Break the Bias #2030 理想の世界 ~日本のジェンダー格差とこれからの未来」を開催しました。この企画は、女性1人1人が自分らしく生きられる社会の実現に向けて活動を続けられているLVMH Perfumes & Cosmeticsとのコラボレーションによって実現しました。

■登壇ゲスト(五十音順)

□ 伊藤綾さん
ソフィアメディ(株)代表取締役社長兼CEO 
(株)リクルートホールディングス サステナビリティトランスフォーメーション部 パートナー 。ゼクシィ編集部時代は、「定時帰りを目指す編集長」として活躍 

□ 薄井シンシアさん 
LOFホテルマネジメント日本法人社長 
20年間、5ヵ国で生活、17年間の専業主婦生活を送ったあと、アルバイトから再就職し、外資系ホテルの営業開発担当副支配人を経験。

□ 中原淳先生
立教大学経営学部教授。専門は企業・組織における人材開発・組織開発。
民間企業の人材育成を研究活動の他、近年は公共領域の人材育成についても活動を広げており、2021年より、文部科学省・中央教育審議会・臨時委員を務める。 

□ 能條桃子さん
一般社団法人NO YOUTH NO JAPAN代表理事・ハフポスト日本版U30社外編集委員
若者向けに政治や社会問題について分かりやすく説明をしているInstagramは現在フォロワー数8.4万人 

“自分らしい生き方を阻む”バイアス

出産を経験していない働く女性350名を対象に行ったスリールの調査では、実に92.7%の人が仕事と子育ての両立に既に不安を感じており、更には、その不安だけが原因で50.4%が退職・転職を検討し、46.6%が妊娠・出産を遅らせようと考えていることが分かりました。

これらはメディアや周りで見聞きする情報などから“とにかく大変そう”なワーママ像、加えて、“仕事も子育てもきちんとやらなければならない”という自身の中で定めるバイアス(偏見)からくるものです。

こうした「子どもを産んで働くにはスーパーウーマンにならなければ失格」だという強迫観念は、“子育て”と“仕事”という重大責務が棒の両端にそれぞれぶら下がっている中で、これまで経験したこともない綱渡りをさせられる感覚に近いのかもしれません。
バランスを崩して落ちてしまったらゲームオーバー・・・本当にそうなのでしょうか?

まずウェビナーの冒頭では、登壇ゲストの過去・現在の体験談に視点を置き、ゲストの方々がこれまでに感じられた自身のバイアスと、それらをどう乗り越えられたのかを聞いていきました。

結婚情報誌『ゼクシィ』の編集長を務められていた際に出産をされた伊藤さんは職場復帰された際に「子どもを育てながら編集長は難しいのでは?」と感じていたといいます。それは、これまで近くに子育てをしながら編集長のような責務を負われている方がいなかったから。

伊藤さんが持たれていたバイアスは「自分が見たことがないもの=実現不可能なもの」でした。しかし、チームメンバーと共に試行錯誤しながら限られた時間で成果を出す働き方を進めていくことで、伊藤さん自身でなく様々な事情を持つメンバーも働き方を一緒に考えるようになり、結果、これまでになかった新しいアイディアが生み出せたりと、職場復帰当時には思いもよらなかった嬉しい効果が表れ始めました。

自身がお持ちだったバイアスを崩すためにも伊藤さんが意識されたことは、“孤軍奮闘”しないこと。子育てをする中ではどうしても物理的な制限が出てきてしまいますが、そうした状況は子育て以外にも起こりえることです。これらを当事者1人で何とかしようとするのではなく、チーム全体で乗り越えていくことで、いつ、だれが、どんな状況になっても崩れない永続的に強いチームとなります。

今では一企業のトップとしてご活躍されているシンシアさんも、47歳で再就職するまでは17年間仕事の現場からは遠ざかっていた時期がありました。

出産前は、「仕事も家庭も子どもも欲しい!」と考えていましたが、子どもが産まれたときに仕事と子育てを両立することに限界を感じ、仕事を一時おあずけし、専業主婦として子育てに専念する選択をしました。そして今、思いきり仕事に集中してキャリアを築かれているシンシアさん。

「一度仕事の現場から離れてしまうともう戻る場所がなくなってしまうのではないか?」という不安から両立に奮闘するワーママも少なくないと思いますが、“仕事と子育ての両立はしなければいけないこと”、それ自体がバイアスなのかもしれません。

当時から自分の人生を長期視点でとらえることで、“全て同時ではなく、1つずつやりたいことを現実にしていく”生き方を体現されているシンシアさんが語られる「人生はマラソン」というキーワードはこれから社会に出るZ世代だけでなく、この瞬間も頑張っているワーママに是非届いてほしいエールでもありました。

No Youth No Japanで代表を務め、若者の社会参画を呼び掛けている能條さんも以前は「自分はサブリーダーが向いている」バイアスがありました。そんな能條さんのバイアスが外れたのは、大学時代のデンマーク留学がきっかけでした。41歳の女性が首相となったタイミングに立ちあったことで、「自分でもできるかもしれない」と思えたと同時に、『女性首相誕生!』と騒がないメディアを見て、日本であったらまずはジェンダーに触れるであろうことを想像し、その時に初めて日本にはジェンダーバイアスがあるのかもしれないと感じました。

No Youth No Japanのリーダーをやることになったのは、誰も手を挙げなかったから、というのが実際のところでしたが、やってみたら意外とできる!ということも経験の中で得た学びです。

企業・組織における人材開発・組織開発をご専門に研究をされている立教大学経営学部教授の中原先生は、当事者を取り巻く環境という視点からお話をされました。人のキャリアを形作るものは『個人要因×環境要因』が大きく関わっており、どちらも変わる必要性を説きます。

“個人要因”としてまず気付くべきは自身の持つバイアスです。バイアス自体は当たり前にあるものであり、ゼロにすることはできません。大切なことは、自分の周りに“鏡”を置いて自身のバイアスに気付き、疑うこと。自身が信じている“こうあるべき”は本当にそうなのか?、バイアスに振り回されずうまく付き合っていくことです。

“環境要因”としては何といっても“長時間労働”の見直しが必要です。物理的制約のあるワーママを含め誰もが働きやすい職場を作ることで、一部の制限なく働ける人だけでなく、より多くの人が活躍できる組織になります。働く側は企業のHP上に謳われている情報だけを信じるのではなく、自らアンテナを張り、そういう組織を見つけていきましょう。

 

次の章では、視点を現在から未来へ移しながら、将来ありたい姿について考えていきます。

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