スリールとLVMH Perfume & Cosmeticsが共催した、現在日本にあるジェンダーに関する課題や背景に目を向け、将来ありたい姿について考えるウェビナー「Break the Bias #2030 理想の世界 ~日本のジェンダー格差とこれからの未来」。
前の章では登壇ゲストのお話を伺いながら、過去から現在に渡ってのジェンダーギャップの背景に迫りました。この章では、Z世代のアンケート結果も踏まえながら視点を現在から未来へと移していきます。
Z世代が考える、ジェンダーギャップと#2030理想の世界
(調査概要)回答年齢:18-25歳 男女50名 期間:2022/2/24-2022/3/4 調査方法:インターネット調査 調査実施機関:スリール株式会社、LVMH Perfume & Cosmetics
本ウェビナーに向けて行ったZ世代男女50名アンケートでは、『日本においてジェンダー格差は存在していると思いますか?』という問いに対し、多くの方が「はい」と答えていました。
そのように感じる背景については、収入格差・選択的夫婦別姓が長年認められないなど、目に見えるジェンダーギャップの他、女性であれば驚かないはずの1年間の育休を男性が取ったことに対して驚いてしまった、といった回答もありました。また、“男ならこうあるべき”という雰囲気が嫌だった、など男性が感じるジェンダーギャップの苦悩も垣間見えました。
能條さんも同世代の友人の話しを聞く中で、男性中心社会の被害者は男女共にあり、周りの若い男性はフラットな価値観を持ちながらも、会社の上司からは『家事は妻に任せて、男は仕事に邁進すべき』など、世代間の違いの狭間に苦しめられているように感じるといいます。
一方で、労働力不足が加速するこれからの時代においては、これまでの“選ばれるのを待つ”生き方から、“自ら選ぶ”生き方が可能となってくるので若者こそ希望を持つべきだとシンシアさんは言います。同じ現実を見ていても、若者が感じる不安と、上の世代だからこそ感じるポジティブな変化。課題もポジティブな変化も併せ持つ一つの現実です。
続いて、『あなたが学生生活や就職活動の中で性別によって不便や不利を感じたことはありますか?』という問いに対して、「はい」と答えた方の中には、『面接官に結婚願望はあるか?聞かれて、「はい」と答えると不利になるかと思い、「当分ございません」と答えた』(女性の回答)など、性別によっては聞かれないような質問がされた例も挙がりました。これもバイアスの一つなのかもしれません。
伊藤さん自身も組織の集合写真の中央に座った時に『女王様みたいだから右にずれましょう』と言われ思わず移動したという経験から、普段は気付かないレベルで自身の中に存在するバイアスに個人個人が気付いて行動を変えていく必要性を感じたといいます。
企業側がそうしたバイアスから社内の体質をアップデートしていくためには、多様性を受け入れ、あらゆる能力が開花する組織は”勝てる組織”ということを伝え続ける必要があると中原先生はいいます。まずは上司の意識改革から行っていくことで、若者・女性限らず誰もが働きやすい魅力的な組織作りに繋がっていきます。
男女雇用均等法時代の世代が築き上げた、女性の社会進出。そこでは、キャリアを築くためには「仕事かプライベート(家庭)の二者択一」を迫られるという課題がありました。そこで、どちらも選択をして奮闘しているのが、現在の“仕事と家庭の両立開拓世代”です。家事育児における性別役割分担意識の偏りから、どちらも背負って大変そうな姿も見えてきた今、最後に次世代に繋ぐバトンについて考えていきましょう。
自分で自分の生き方や選択に「合格印」を押してあげよう
ここまで現在日本にあるジェンダーに関する課題や解決策について考えてきましたが、最後に登壇ゲストの皆さんから「ありたい姿・社会になるためのアクションのヒント」をいただきました。
伊藤さんは選択肢のプレゼントという素敵なキーワードを挙げられました。
「こうあるべき」に縛られるのではなく、本当はその裏にいくつもあるはずの選択肢も考えてみる。そして、今は目の前になくても自分で作ったり、周りに提案することで、それが周りの人の選択肢を広げるプレゼントになります。これから私たちはどれくらい選択肢を増やしていけるでしょうか?新たな選択肢が増えていった時、見える風景、社会の在り方は変わっていくはずです。
能條さんは、今あるジェンダー議論が比較的恵まれた環境にある女性や特権性のある人を中心に語られることにも言及し、みんなにとってのジェンダー平等というキーワードを挙げられました。
性別や生まれ育った環境によらず、多くの人がこの課題を自分ごととして捉え、考え、行動を起こしていける社会を作っていきたいです。そして、これからの世界を作る若者の一人として、「決められたものだから今後も変わらない」ものは何もないのだということも意識して行動していきたいと思います。
シンシアさんは自身も体現されている、自分の人生、自分で決められる世界というキーワードを挙げられました。
過去の、専業主婦がマジョリティだった時代から、ワーママがマジョリティの現在。マジョリティを選んでおけば安心だと思っていませんか?マジョリティの価値観に囚われることなく、それぞれが自分の意志で自分の進む道を選べ、自分の選択に満足できる世界にしていきましょう。そのためにも、自分の想いや価値観を流されずにしっかり持っていてください。人生は長い、やりたいことはなんでもできます、やってみましょう!
日々学生と接する中で、大学に入るまでに既に自信を失くしている学生が多いことを目の当たりにされている中原先生は、誰もが自分を好きになれる社会というキーワードを挙げられました。
自分自身を好きになれる生き方、働き方ができる環境を選ぶこと、その時に障害となる考え方はアンインストールすることも大切です。社会も自分自身も共に、アップデートしていきましょう。
また、人生100年時代、誰にでも不測の事態は起こりえます。そうした時に「これで私の人生おわりだ」と感じてしまう必要がないよう、どんな状況下でも誰もが働き続けられる社会・組織に向けて、一人一人が変わり続けていきましょう。
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令和になった今も、いまだに国際社会に大きな後れをとる日本のジェンダーギャップ問題の背景には、様々なバイアスの影が潜んでいます。世代間を跨いだお話や、Z世代のアンケート結果からも、学生時代からの意識しないほど小さな、わずかな、そしてささいなバイアスやジェンダーギャップを前提とした会話や体験の積み重ねが、いつのまにか個々人の中に、社会の中に大きく凝り固まったものとして存在しているように感じました。
個人が自分のバイアスに気付きまずアクションをおこしてみる、一歩を踏み出そうとした時に組織の風土やバイアスが足枷とならないよう、スリールはこれからも、誰もが個としてイキイキといられるよう組織の変革をサポートしていきます。
登壇いただいた皆様、ありがとうございました!