小学校入学前のお子さんを持つ親であれば、1度は耳にしたことがあり、不安を抱く方も多い「小1の壁」。弊社が2023年1月に実施したアンケートでも、女性の約7割が「小学校入学前に比べ仕事と育児の両立が大変になった」と回答しています。
そこで今回は、実際「小1の壁」を経験した/経験予定の3名に集まってもらい、「小1の壁」に関するトーク会を開催しました。
「小1の壁」をどう個人で工夫して乗り越えたのか?、乗り越えるにあたり会社に求めることなどを語ってもらいました。
●参加者 S.K F.Y C.K ●ファシリテーター 小松原 |
◆保育園時代と比べて
小松原
今回は小学校入学前よりも仕事と子育ての両立がしづらくなると言われている「小1の壁」について、実際に皆さんが感じたことをお伺いできればと思います。弊社が今年行った調査では、女性の約7割が「小学校入学前に比べ仕事と育児の両立が大変になった」と回答していました。皆さんが保育園時代と比べて感じたことはありますか?
S.K
私の場合は1人目がコロナ禍で入学。4月5月は授業も行われませんでした。学校からは課題だけが渡されましたが、勉強をしたことがない子どもに対し、学習の習慣付けや宿題サポートを全て家庭で行わなければならず、とても苦労しました。
F.Y
うちは今小学1年生ですが、1年生は「勉強」自体より「宿題をする」「持ち物を準備する」といった習慣づけの方が大変だと感じています。子どもは学童に入っていて、宿題は学童でやることになっているのですが、習い事があって早目に帰宅してしまったり、遊びに夢中になって宿題が終わっていないこともしばしば。入学してしばらく経ちますが、まだまだ親が宿題の状況を確認し、終わっていなければ声掛けをするという対応が必要です。
小松原
保育園時代は「ご飯を食べてお風呂に入って寝かせる」という部分が大変でしたが、「宿題」という項目が増え、さらに親がサポートしなければならないというのは大変ですよね。
では、子どもたちが登校している時間も保育園と比べて短かったり、曜日や行事によって帰宅時間が変わったりと、スケジュール管理についてはいかがでしょうか?
S.K
私は実際そうした“時間”の関係で壁に直面しました。小学校に入学するまでは、朝7時から夜8時までという、長時間子どもを預かってもらえる保育園を選び通っていました。一方小学校に入学してからは、学童に入っても子どもを預かってもらえる時間は最長6時半まで。そしてそのことに気が付いたのは、入学前年の秋に行われた説明会。前職では子どもが小学校に入学するまでしか「時短勤務」を利用することができなかったので、「これまで夫婦2人で協力して仕事育児の両立を頑張ってきたけれど、もう2人だけでは対応できない」と思いました。対応策としては「人事に相談して時短勤務の延長を検討してもらう」、「両親に近くへ引っ越して来てもらう」、「転職やキャリアチェンジをする」などがありましたが、どれもすぐに決断・実行できるものではなく悩みましたね。
F.Y
前職で小学校低学年のお子さんがいらっしゃる他の方は、どのように対応されていたのでしょうか?
S.K
パートナーや義両親・実家など、周りからサポートを得られる環境にある方が仕事を続けることができていた、という印象です。例えばパートナーが自営業で、自宅で子どもを見ることができるという方や、兄弟の子どもが自分の子どもと同年齢でお互いサポートし合うことができるという方。そうした方々は無理なく仕事を続けることができていましたが、特別なサポートを得られない私や後輩は、「ここまで頑張って来たけれど、子どもが小学生になったら仕事を続けられない……」と話していました。
小松原
なるほど。では、会社にこんな制度があったら仕事を続けられたかもしれない、ということはありますか?
S.K
私の場合は制度というよりも、上司やマネジメント層の意識がネックでした。「会社に居なければ仕事になっていない」「小学校に上がったのだから未就学時代より子育てが楽になり、仕事に打ち込めるはず」という雰囲気があり、理解が得られなかったのは辛かったですね。
小松原
確かに上司やマネジメント層の意識や職場の雰囲気は、仕事を続けられるかどうかに大きく影響しますよね。
●小1の壁アンケート調査結果はこちらから無料ダウンロードいただけます。 |
◆心配していたけれど意外に大丈夫だったこと
小松原
次に「小1の壁」をむかえるにあたり、心配していたけれど意外に大丈夫だったことについて教えてください。
F.Y
私は子どものメンタル面を心配していたのですが、今はむしろ学校や学童をとても楽しんでいることに嬉しい驚きを感じています。こればかりはお子さんそれぞれの感じ方によるものですし、”行き渋り”があっても現在は色々な選択肢があるので、心配しすぎる必要はないのかなと思います。
また入学前は長期休みの過ごし方も不安だったのですが、弊社は「フルリモートかつ勤務場所の制限もなし」という柔軟な働き方ができることもあり、無事乗り切ることができました。今年の夏休みは子どもと一緒に山梨へワーケーションに行ったり、休暇を取って家族旅行に行ったり、卒園した保育園に通わせてもらったりと、子どもも色々な経験ができて楽しかったようです。
S.K
私の場合は勉強のサポートを心配していたのですが、そこは夫が対応してくれたのでとても助かりました。また、勉強のサポートだけでなく、持ち物の準備やメンタルケアも夫が進んで対応してくれました。保育園時代に比べて増える負担を「自分1人で何とかしなくてはならない」と抱え込んでいたのですが、実際には上の子を夫が対応、下の子を私が対応という形で分業することができたのは良かったですね。
小松原
乳幼児のお世話よりも、言葉で意思疎通が図れる上の子どもをパパにお願いするというのは良い方法ですね。「子どもがある程度成長してからの方が育児に参加しやすい」というパパの声もよく耳にします。
◆今後子どもが小学校へ入学するにあたり
小松原
それでは実際これから「小1の壁」をむかえる方はどのような想いを抱いているのか、お話しを伺ってみたいと思います。
C.K
まず私が心配しているのはPTA活動です。保育園は“働いている母親”というのが前提で、イベントや行事もお互い協力して乗り切っていました。一方、私の子どもが通う小学校は専業主婦の方も多いエリア。平日にPTA活動が行われることも多いそうなので、仕事と両立できるかなという想いがあります。
次に気になるのはやはり子どものメンタルケア。「お友達ができるかな」とか、少し気は早いですが、「子どもが高学年になった時、SNSでお友達とトラブルになってしまったらどうしよう」といったことも考えてしまいます。小学校は保育園に比べて人数も増えますし、色々な家庭環境の子どもが集まるので、子どもが元気で楽しく登校してくれると良いのですが……。
あと先ほども話題になっていましたが、長期休みをどう過ごすかも悩みの種です。実は先日、私が育休期間中は公的(公設)学童を利用することができないということが分かり、民間学童も視野に入れて情報収集を始めました。
小松原
ちなみにこの中で民間学童を検討された方はいらっしゃいますか?
F.Y
私は今年公立学童を選びましたが、来年以降については検討中です。私が住んでいるエリアは子どもの数が多く、公的学童もウェイティングが出てしまう状況。上級生になるにつれて定数が減ってしまうので、1年生で入ることができたとしても、来年、再来年は分からないという不安はありますね。対して、民間学童は「お金を払えば入ることができる」という安心感はあります。
小松原
確かに公的学童は1年生で入れても、3年間の在籍できるとは限らない。「小1の壁」と言いつつ、2年生や3年生にも壁があり、働く親としては、子どもが低学年のうちは学校にも手厚いサポートをお願いしたいという気持ちがありますよね。
●小1の壁アンケート調査結果はこちらから無料ダウンロードいただけます。 |
◆仕事と育児を両立させるために行なった工夫
小松原
小学校入学にあたり、仕事と育児を両立するために行ったこと、行っておけば良かったことなどはありますか?
S.K
今振り返ると、ママ友と「助け合える関係性」を築いておけば良かったかなと感じています。情報収集のためにLINEでコンタクトは取っていたのですが、お互い助け合うというところまでは意識が周りませんでした。
小松原
同じ境遇で近くに住んでいないと情報収集がメインになってしまい、助け合うところまではなかなか難しいですよね。私自身は「小1の壁」を越えられなくて小1の夏休みにフリーランスになったという経緯もあり、同じような境遇で困ってるママがいたら声掛けをしてサポートし合うようにしていました。ただ、個人だけでサポートし合えるママ友を見つけるのは難しいかもしれませんね。例えば、助け合えるママ友を繋ぐ仕組みやコミュニティーなどがあるといいですね。
また、ママ友だけでなく、親やパートナー以外に頼れるところを見つけておくというのはとても大切なことだと思います。私は習い事の送迎でファミリーサポートを利用していました。子どもから入学前に「習い事をしたい」と言われた時には無理だと思いましたが、ファミリーサポートにお願いすることで子どもの希望を叶えてあげることができました。
F.Y
私も最初は保育園時代に比べて増える負担を「自分1人で何とかするしかない」と思っていましたが、今は調べてみると、ベビーシッターサービスなどもたくさんある。お金はかかりますし、そういうサービスを利用することに対して心理的なハードルがある方もいらっしゃるかもしれませんが、そこさえ乗り越えることができれば、頼る先は意外とあるんだなと実感しています。
小松原
今すぐにではなくても何か対応が必要になった時、その都度頼れる先はないか諦めないで探してみるというのも大切ですね。
S.K
私は会社との業務調整も大切だと思います。前職では、私と後輩で「子どもが小学校へ入学する際、仕事を続ける上でネックとなるポイント」について話し、その内容を直接人事の担当者に伝えました。私たちが伝えたことで初めて「小1の壁」について理解してもらうことができました。
小松原
「子どもの小学校入学」=「子どもが大きくなって手がかからなくなる」という考えに陥ってしまいがちな職場も多いのではないでしょうか。けれど実際は保育園時代より大変な部分があることも事実です。子どもが小学生になることで増える親の負担や、仕事を継続する上でネックとなる部分について、会社が理解しておくことはとても大切です。その上で社員の側も自分の状況をきちんと説明・提示して、業務調整を行なっていくことが重要ですね。
◆終わりに
小松原
最後にこれからお子さんの入学をむかえる方へメッセージをお願いします。
F.Y
これから「小1の壁」をむかえる方は、自分1人で乗り越えようとするのではなく、頼れるサポート先をたくさん見つけておいてください。そしてマネジメントの方々や企業には、ぜひ受け入れ態勢を整え、「小1の壁」をむかえる社員が活躍できるようサポートし、背中を押して欲しいと思います。
S.K
子どもが生まれたばかりの時は周りを頼ることができなかったという方も多いかと思いますが、「小1の壁」をむかえる頃にはもう皆さん子育て6年目のベテラン。しっかり「周りを頼る」ということも実践して欲しいと思います。
C.K
今回先輩ママお2人の話しを聞いて、今は情報収集だけになってしまっているママ友ともサポートし合える関係を築いていきたいなと思いました。
子どもが小学校入学をきっかけに大きく成長するように、働く親も子どもの小学校入学を期に、タイムマネジメントを向上させ、周りを頼る力を身につけることができるようになれば、「小1の壁」は「壁」ではなく、成長のチャンスとなるかも知れません。
そして企業は“活躍人財”となるべき社員が「離職」という選択肢を取らざるを得ない環境にしないためにも、「小1の壁」について理解を深め、サポート体制を整える必要があります。
弊社では、仕事と子育ての両立に不安を抱える女性を分析した「両立不安白書」や、2023年「小1の壁」アンケート調査結果を公開しております。是非こちらもご覧ください。
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