スリールは、女性就業者の31%が従事するサービス・ホスピタリティ業界に焦点を当て、「働く女性・次世代の女性が自律的なキャリアを構築できる環境作り」をテーマとしたウェビナー「当事者の声から考える女性のキャリア自律を叶える組織×地域 #Embrace equity」を開催しました。この企画は、女性1人1人が自分らしく生きられる社会の実現に向けて活動を続けられているLVMH Perfumes & Cosmeticsとのコラボレーションによって実現しました。
女性のエンパワメントを目的に始まった協働プロジェクトの2年目として、開催された今年のウェビナーでは以下のゲストの方にご登壇いただきました。2022年国際女性デーウェビナーの様子はこちらから。
ウェビナーの様子をまとめた冊子もご用意しています(無料)ダウンロードはこちらから。
前の章ではLVMH P&C美容部員のアンケート回答者600名の声から見えてきたキャリア自律を叶える促進要因についてご紹介しました。この章では、阻害要因への対応、そして次世代に向けたメッセージについてご紹介していきます。
阻害要因にどう対応できるか?
キャリア自律の促進要因としてはいくつか傾向が見えてきましたが、では逆に女性のキャリア自律行動を阻害するものは何でしょうか?今回のアンケートでは、仕事にやりがいを感じている社員であっても、26.5%が「将来、結婚・育児・育休復帰のタイミングで退職すると思う」と回答。その理由は1位「平日夜の勤務対応ができない」(84.5%)、2位「日曜祝日の勤務対応ができない」(49.3%)というもの。やはり夜間・土日・祝日の勤務は、女性のキャリア継続を阻害してしまっているようです。こうした現状に企業や行政ではどのような対応をしているのでしょうか?
イオン(株)では2014年から保育事業に着手し、365日、7:00〜22:00まで開園している「イオン夢みらい保育園」を事業所内に設置。現在では全国にイオンゆめみらい保育園が31施設、提携保育施設が1施設、イオングループの企業主導型保育園が3施設あり、全国90箇所あるニチイ学館の企業主導型保育園「ニチイキッズ」も、イオングループの従業員枠を設け利用できるようにしているそうです。江藤氏は「全国の事業所に保育園を設置するのは不可能ですが、外部提携施設も上手く活用しながら働く女性をサポートしていきたい。」とコメントしました。
豊岡市内の事業所である株式会社ユラクでは、運営している旅館において「たすき掛け勤務」「中抜け勤務」といった変則勤務を撤廃。手塚氏は「事業主の方は『変則勤務を撤廃したことで人件費が1.5倍になってしまった』とおっしゃっていましたが、従業員の働きやすさを優先する姿勢は素晴らしいと思います。」と今回の対応を支持。
一方シフト勤務の撤廃という対応をとることは難しいホテル業界。大野氏は「事業所の近くに住むことができれば、通勤時間を短縮し、シフト間の時間も有効活用できます。社員が事業所近くに住むことができるよう、家賃補助という形でのサポートを検討しています。」と自社での取組みについてシェアしました。
各企業・行政では女性のキャリア自律行動を促進するため、様々な対応策やサポートを実施していますが、それでも課題全てを解消することはできません。白澤氏は「弊社ではほとんどの社員が育児休職から復職しますが、それでも復職できない方もいらっしゃいます。それは生まれたお子さんに障がいがあるなど、特別なケアが必要となる場合。母親である女性社員自身がお子さんのケアに時間を割く必要があるということもありますが、お子さんを預かってくれる保育施設の確保も難しい問題です。今後は特別なケアが必要となるお子さんをお持ちの社員を、どうやってサポートしていくか検討していきたいと考えています。」とコメントしました。
次世代の女性が自律的なキャリアを構築できる環境作り
白澤氏は「女性自身に、『自分がキャリアの主人公である』という意識を持って欲しいと感じています。正解を求めたり周りと比較したりするのではなく、まず『自分がどうしたいのか』を考えてキャリアプランを描き、それを周りに伝え続けていくこと。自分から動き出す姿勢が大切です。」と次世代女性にエールを贈りました。
大野氏は企業・行政が協力しながらインフラ整備に取組む必要性について言及。「冒頭説明があったとおり、サービス・ホスピタリティ業界に従事する女性就業者は全体の31%。けれど社会のインフラはまだ“平日・日中勤務”が前提になってしまっている部分が多い。サービス・ホスピタリティ業界に従事する女性の活性化は、日本が観光大国として発展していくことに繋がります。」とコメントしました。
江藤氏は、「女性にとって働きやすい会社は男性にとっても働きやすい会社。『家事は女性がしなければならない』『男性は外で働かなければならない』といった、“しなければならない”意識を無くすことができれば、家族が生き生きと働ける社会を実現することができるのでは。」と意識改革の重要性について触れました。
手塚氏は「過度な配慮で女性がキャリアの経験を積むチャンスを奪ってしまうことがないよう注意も必要。子育て中でも周りからのサポートがあり、仕事を頑張りたいという女性もいます。“配慮”が“排除”に繋がらないよう、個々の意思を尊重してサポートすることが大切です。」とアドバイスしました。
堀江は登壇者4名の提言・アドバイスを受け、「今回サービス・ホスピタリティ業界で働く女性のキャリア継続に関する問題は、個人だけで解決するのは難しいと改めて実感しました。企業・行政・社会が一体となってキャリア自律行動を促進できる環境造りに取組んでいく必要があります。」と締めくくりました。
今回のウェビナー開催にあたり実施したアンケート結果は、こちらから無料ダウンロードいただけます。ぜひ、ご覧くださいませ。