コラム

「マミートラック」の解消に向けて ~育児期社員が活躍できる職場を実現するには?~

公開日:2023.10.13更新日:2023.10.13staff

女性の就業状況における変化

厚生労働省が今年7月末に発表した「令和4年度雇用均等基本調査」結果を、皆さんはもうご覧になりましたか? この結果には「育児休業取得者の割合」が含まれていますが、令和4年度における女性の育児休業取得者の割合は80.2%。ここ10年以上にわたって80%を下回ったことはありません。また、女性の就業率を見ても、結婚・出産を機に低下し育児が落ち着いた頃に上昇するという“M字カーブ”は解消傾向にあり、女性が仕事と育児を両立することは「当たり前」になりつつあります。

出典:「令和4年度雇用均等基本調査」(厚生労働省)

しかし、正規雇用比率を見てみると女性は25〜29歳の59.7%をピークに下降、30代、40代は非正規雇用が中心となる“L字カーブ”を描いている状況。給与額に関しては正社員同士・非正規雇用労働者同士で比較しても男女間に差があり、国際的に見てもその差は大きいと言わざるを得ません。

企業における管理職相当の女性割合については、政府が発表した「女性版骨太の方針2023」にも明記されたように上昇傾向ではあるものの、上位の役職になるほど低い状態。そして国際的にみても低い結果であることがわかります。

出典:「女性活躍・男女共同参画の現状と課題」(内閣府男女共同参画局)

出典:「女性活躍・男女共同参画の現状と課題」(内閣府男女共同参画局)

出典:「女性活躍・男女共同参画の現状と課題」(内閣府男女共同参画局)

《「マミートラック」の発生を防ぐために・・》

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「マミートラック」とは

このように日本では出産後も働き続けることは「当たり前」になりつつ、女性が「活躍している」とは言い難い状況。仕事と育児の両立はできていても、昇進や昇格には縁遠いキャリアコースに乗ってしまう「マミートラック」に陥る女性も少なくありません。「マミートラック」は1988年にアメリカで生まれた言葉。元々は育児をしながら働く母親や、そのフォローに回る人達の問題を解決するための施策を指し、フラットな意味で使用されていました。しかし現在日本では、子どもを育てながら働く女性が「希望するキャリアを築くことができない」「職場で活躍できない」というネガティブな意味で認識・使用されています。

「マミートラック」が発生する原因

それではなぜこのような「マミートラック」が発生してしまうのでしょうか?それには2つの理由が考えられます。

1. 女性に対する職場のバイアス

「小さな子どもがいる女性は仕事よりも育児を優先させたいだろう。」「仕事と育児を両立している女性に大きなプロジェクトを任せると負担になってしまうだろう。」悪意ではなく善意であっても、同じ職場の上司や同僚がこうしたバイアスを持って子どもを育てながら働く女性に接してしまうと、知らないうちに相手を傷つけ、キャリアの選択肢や可能性を狭めてしまうことがあります。

2. 性別役割分担意識

総務省が行った「社会生活基本調査」の結果において、2021年共働き世帯における家事関連時間は女性が391分、男性は114分。家庭における「家事」「介護・看護」「育児」の負担は依然として女性の方が大きいことが分かります。また同年、公益財団法人21世紀職業財団が実施した調査において、「配偶者のキャリアを優先していく」と回答したのは男性が9.6%、女性は55.2%という結果。

このように女性の復職が「当たり前」になったとしても、家事関連の負担が変わることなく、「男性は仕事優先・女性は家庭優先」といった根強い性別役割分担意識が残っていると、女性がキャリア形成のために時間を確保したり行動したりするのは、難しい状況です。

出典:「特集編 新たな生活様式・働き方を全ての人の活躍につなげるために~職業観・家庭観が大きく変化する中、『令和モデル』の実現に向けて」(内閣府男女共同参画局)

出典:「~ともにキャリアを形成するために~子どものいるミレニアル世代夫婦のキャリア意識に関する調査研究(概要)」(公益財団法人21世紀職業財団)

「マミートラック」による企業への影響

「マミートラック」の発生は、女性社員本人だけでなく、企業にも大きな影響を与えてしまいます。ここでは「マミートラック」が発生することで想定される問題点を3つ挙げてみましょう。

1.女性社員のモチベーション低下

単調な仕事やサポート業務、責任のない業務ばかり与えられていると、達成感や充実感を得ることができずモチベーションの低下に繋がってしまいます。本人の意思に反する業務内容変更や配置転換が行われれば、女性社員の退職を招いてしまうという事態も想定されます。

2.女性管理職登用の停滞

復職を機に業務内容が変わってしまうと、これまで築き上げてきたキャリアを継続することが困難になってしまいます。また、単調な仕事やサポート業務ばかり担当していると経験や実績を積む場が減ってしまい、女性管理職や候補者の昇進・昇格が遅れ、その結果として女性幹部の育成に時間がかかってしまうという結果に。

3.企業イメージの低下

「子育てをしながら働く女性は活躍できない」、「女性管理職の登用が進んでいない」といったイメージが社内外で定着してしまうと、離職率の増加に繋がったり求職者が集まらないなど、優秀な人材確保が難しい状況になってしまいます。

 

「マミートラック」の発生を防ぐには

では「マミートラック」の発生を防ぐため、企業ではどのような対応ができるでしょうか?まず育児期社員のライフキャリアを考える際には、①仕事、②プライベート、③サポート環境という3つの領域を明確に意識することが大切です。そしてこの3つの領域について、育児期社員は上司への状況説明、上司は育児期社員の状況理解に努めましょう。

 

<3つの領域>

 ①仕事:これまで培ったスキル、仕事への意識、価値観など

 ②プライベート:子どもの人数・年齢・性格、家事の状況など

 ③サポート環境:パートナーや両親の支援状況、地域やサービス会社の利用状況など

 

育児期社員​​のライフキャリアはこの3領域の掛け合わせによって決まり、状況は人それぞれ。上司と社員がこの3領域についてお互い理解を深めるためには、それぞれの領域について①将来の展望・希望、②現状、③配慮して欲しいこと・困っていること、という3点を聞き取り、伝えることが大切です。

またコミュニケーション全般において、「私たちは他人の行動を自分の経験を基にして『判断』していること」「自分と他人の背景や価値観は異なること」を常に意識しておく必要があります。上司は社員に対して自分の憶測を基に対応するのではなく直接本人の口から聞くこと、社員は上司に対して察してもらうことを期待するのではなく明確に希望を伝えることが大切です。

育児期社員​​が持つ①仕事、②プライベート、③サポート環境という3つの領域について、①将来の展望・希望、②現状、③配慮して欲しいこと・困っていること、という3点を明確にするコミュニケーションを取ること。それが「マミートラック」の発生を防ぎ、育児期社員​​が活躍できる職場環境を創ることにつながります。

 

妊娠・出産を機にキャリアを見つめ直し、女性が自分の意志で家庭を優先し、仕事をセーブする決断をすることは決して間違いではありません。子育てにはその時にしか味わえない感動や喜びがあることも事実です。ただ、「子育てもしながら仕事も頑張りたい」という意欲を持っている女性が意図せぬ「マミートラック」に乗ってモチベーションを低下させてしまい、会社も意欲ある女性を上手く活用できない。それは女性社員にとっても会社にとっても、とても「もったいない」状況です。こうした事態の発生を防ぐためにも、弊社では管理職や育児期社員を対象とした「両立キャリア研修」、育休を取得する部下を持つ管理職を対象とした「研修動画レンタルサービス」など、様々な研修やサポートツールをご用意しております。ご興味のある方はぜひ詳細についてお問い合わせください。

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参照URL:

厚生労働省.「令和4年度雇用均等基本調査」. https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/71-r04.html,(参照 2023-08-25)
内閣府男女共同参画局.「女性活躍・男女共同参画の現状と課題」. https://www.gender.go.jp/research/pdf/joseikatsuyaku_kadai.pdf,(参照 2023-08-25)
内閣府男女共同参画局.「男女共同参画白書 令和5年版 全体版(PDF版)」. https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r05/zentai/pdfban.html,(参照 2023-08-25)

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