皆さんは、昨年世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップ指数ランキング*で日本が何位だったかご存知でしょうか?
結果は過去最低の121位(153カ国中)と、先進国の中でもアジアの中でも最低順位でした。比較軸となる経済、教育、健康、政治のうち最も世界平均と差が開いているのが、”経済(管理職の男女比など)”と”政治(国会議員の男女比など)”でした。
一方、11年連続1位となったのはアイスランド。北海道より少し大きい面積に人口35万人の小さな国です。多くの方にとっては普段あまり馴染みのない国かもしれませんが、調べてみると育休を取ったことで話題となったニュージーランド首相と同様、アイスランドも現在の首相は女性であり、また、これまでにも3人の女性首相がいた国であることが分かりました。
今回は、なぜアイスランドがジェンダーギャップ指数不動の1位を取り続けられるのか、日本との大きな違いを項目別にご紹介します。
また、日本のランキングが苦戦する背景にあるのでは?と考えられる、女性が持つ自信の低さについても併せてご紹介します。
※ 経済、教育、保健、政治の4分野14項目における男女格差の状況を指数化し、国別に順位をつけたもの
アイスランドと日本、ここが違う!
日本と同じく、島国であるアイスランド。
アイスランドは、デンマークやノルウェーの統治下に置かれたのち1944年に独立を果たした比較的新しい国です。また、ジェンダーギャップ指数同様、イギリスのエコノミスト紙が毎年発表している世界平和度指数ランキングでも1位の常連の国でもあります。(163カ国中/2019年度日本は9位)
ジェンダーギャップ指数を発表している世界経済フォーラムのデータによると、日本とアイスランドには政治、経済分野でこれだけの差がありました。(項目一部抜粋)
・男性の育休取得率
日本は6.16% アイスランドは74%
これは、男性の育休取得率の値です。アイスランド値参考:202001.pdf (gender.go.jp)
アイスランドでは、法律で定められた9ヶ月の育休期間のうち、3ヶ月は母親のみ、3ヶ月は父親のみが取得可能。残りの3ヶ月は両親のどちらでも取ることもできる、という政策を2000年から導入しています。
父親しか取れない育休期間は母親に譲ることができないため、取得しない場合はその分取得できる権利を手放すことになります。
つまり、「権利を手放すくらいなら…」と、父親が育休を取得するような仕掛けになっているのです。
他にも、子どもが8歳になるまでの間に4か月の休みをいつでも取得できるなど、出産直後だけでなく長期的に両親が子どものそばでサポートができる環境が整備されているようです。
・企業の女性役員比率
日本は14.8% アイスランドは41.5%
これは、企業の役員に占める女性の比率です。
なぜここまで高い値なのかと調べてみると、理由は「クオーター制度」でした。
クオーター制度とは、法律で男性・女性の割合を一定以上に定める「クォータ制度」を導入し、従業員50人以上の企業を対象に、女性役員比率を「最低4割」と義務付けています。その結果、企業の役員や国会議員の4割以上が女性となっています。
また、パートタイム労働であっても、会社の役員や管理職に登用されるようでした。
アイスランドではパートタイム労働の意味合いが日本とは異なり、パートタイム労働もフルタイム労働と同一労働・同一賃金です。
そのため、日本のイメージする「パート・アルバイト」という雇用形態ということではなく、短い時間で成果を出す労働形態としてパートタイム労働があるのです。
限られた時間でしか働けない(働かない)ことが昇格の足かせにはならない、これは日本と最も大きな違いではないでしょうか。現状、アイスランドの女性の30%はパートタイム労働として働かれているようです。
・国会議員の女性比率
日本は10.1% アイスランドは38.1%
これは、国会議員に占める女性の比率です。
現在、アイスランドの首相は、カトリーン・ヤコブスドッティルという40代の子育て女性です。
先述の役員比率の高さの背景にもなった「クォータ制度」の結果、企業の役員や国会議員の4割近くが女性となっています。
一方、日本でも男女の候補者を均等にするよう求める「候補者男女均等法」が成立(2018年5月)したものの、その後の2019年参院選では、主な政党の女性候補者は28%にとどまっています。このことからも、アイスランドの役員、議員の女性比率の高さは法律に守られただけのものではないことが分かります。
参照:NHKハートネット 特集 世界でもっとも男女平等な国(1)父親の育休取得率7割!
アイスランドが、ジェンダーギャップ指数「世界1位」になるまで
今では男女平等のモデルとされるアイスランドですが、自然に現在の状態になったわけではありませんでした。過去に起きた2つの出来事が大きなきっかけだったと言われています。
1. 女性たちによるストライキ
1つ目は、1975年に男女賃金格差が60%近くあったことに抗議し、同一賃金を求めて国の女性の90%が一日仕事と家事を止めて「デイオフ」を取ったストライキです。結果、家事や職場から多くの女性が離れたことで、社会における女性の存在感を示しました。
ストライキ後、国会に議席を持っていた女性議員が集まって政党を結成し、次の選挙で躍進することで、他の党も女性の候補者を立てるようになり、女性の政治進出が進んだようです。進出が進んだだけでなく、ストライキの5年後には、国民から直接選挙される大統領選挙で初めて女性が大統領として選ばれました。
2. 金融危機
2つ目は、2008年のリーマンショックから始まった世界金融危機と言われています。通貨が暴落し銀行が倒産、政府の信用も失墜。銀行や政府のトップはほぼ男性で占められていたため、「意思決定の場に多様性が必要」との声が高まりました。クオーター制度が法律に取り入れられたのもちょうどこの時期でした。その結果、女性議員の比率は4割を超え、2009年に初めての女性首相が誕生しました。ちなみに、2008年時点でのアイスランドのジェンダーギャップ指数は世界4位。既に高いランキングではありましたが、これらのきっかけで次の年から11年連続で不動の世界1位となっています。
今回、コロナウィルスで学校が一斉休校になった際にも、日本では働きながら子育てをしている世帯について事前の配慮がなされることはありませんでした。このことからも、休校の決断が現時点で親のサポートが必要な小さい子どもの子育てを行ってない男性ばかりの政治の中で決められており、男女共に子育て世代の意見が反映されにくい環境であることが指摘されています。「意思決定の場に多様性が必要」、2008年にアイスランドであがった声とまさに同じことが2020年の日本で起きているのかもしれません。
日本の女性は自信がない?
ここまでいかにしてアイスランドがジェンダーギャップ指数世界1位を成し得ているかみてきましたが、対して、ジェンダーギャップ指数121位の日本の女性に目を向けてみたいと思います。
ジェンダーギャップ指数は男女の差、つまりは男性に比べた時の女性の活躍度合いを測るものとも言えますが、日本のランキングが苦戦する背景には女性が「私には無理」と考える傾向も関わっていそうです。日本は文化的にも謙遜することを美徳として捉える風潮がありますが、これからご紹介する2つの調査からも、周りと比べ日本の女性は自信が著しく低いことが垣間見えます。
ソーシャルネットワークサービス企業の調査が、世界22カ国を対象に「仕事で成功する自信」に関する調査を行った結果、日本は男女共に平均より2割も低く、調査対象国の中では最も低いことが分かりました。さらに、日本の女性は男性より7.5%低い結果となっており、周りに比べても自信がないことが浮き彫りとなりました。(「100」を自信の基準得点としており、得点が高いほど、その市場に暮らす人々がより強い自信を持っていることを表しています。)
また、仕事の機会を阻害している要因として「家事サポートの不足」をあげたのも、男性7%に対し女性は16%と2倍以上の差がついており、女性側に家事の負担が寄っており、また、負担が寄っていることに対して男女間に意識の温度差があることが分かりました。
調査詳細:リンクトインが市場調査会社GfKに委託し、世界22か国において18~65才の30,000人を超える対象者に対し行ったオンライン調査
対象地域 ●北米: カナダ、アメリカ合衆国 ●南米:メキシコ、ブラジル ●中東: アラブ首長国連邦 ●欧州: フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、オランダ、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリス ● アジアパシフィック: オーストラリア、中国、インド、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、シンガポール
参照: Forbs Japan 日本人女性「成功する自信」 22カ国中最下位, Business insider 【世界22カ国調査】最も仕事に自信が持てない・運任せなのは日本人。家族と過ごしたい男性は3割以下
次にご紹介したい、途上国支援を行う国際NGOの調査が行った「女性が考えるリーダー像の意識調査」からも、同じような結果が見受けられました。
”リーダーになる自信を持っているか?”の質問に対し、他の調査対象国の平均76%の一方で、日本の女性は27%。また、”家族、友人、先生はあなたがリーダーになることを 励ましてくれましたか?”との質問に対しても、「はい」と答えた比率は他の調査対象国よりも低い結果でした。
国の発展度合い、文化などの前提状況が大きく違いますが、日本では女性がリーダーになることへの励ましが他と比べ少ないことからも、女性がリーダーになる自信を失ってしまっているとも言えるのではないでしょうか。
ジェンダーギャップ指数ランキングにも表れている通り、教育段階では男女差なく過ごしてきたにも関わらず、社会に出ると急に男女差が出てきてしまう日本の現状。では本当に日本の女性は社会で活躍する能力が他の国の女性に比べ著しく低いのでしょうか?
私たちはそうとは思いません。
個人の事情で周囲に迷惑をかけることを良しとしない雰囲気、周りと同じが一番という同調圧力の強い社会の中では、子育てによる様々な制限を受け入れる雰囲気が周りはもちろん、女性自身の中にも生まれにくいがために、潜在的に「自分には無理」と引け目を感じている部分も大きいのではないかと考えています。
この結果を受けて、「日本の女性は自信がないんだ」「リーダーになる意思がないんだ」と思うのではなく、「優秀な人材を固定観念によって埋もれさせている」と危機感を持つことが必要です。アイスランドと日本の違いは、”国の本気”度合いです。アイスランドのようにしっかりと法律などでポジティブアクションを行うことで、確実に向上していくのであると私たちは考えています。日本はまだまだ、女性活躍やダイバーシティにおいては、後進国であるという意識を忘れずに、積極的な施策を打ち続けていくことが重要なのではないでしょうか。
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