コラム

産休・育休が女性に悪影響を与えないために、企業ができること

アイルランドの大学からつい先日発表された、産休・育休と企業の関係についての最新研究をご紹介。イギリスとアイルランドの300名の女性へのアンケートや28企業とのインタビューを通して、明らかになったこととは?管理職や人事部が日本でもすぐ取り入れることができるアドバイスが盛りだくさんです。

公開日:2018.09.18更新日:2023.06.20sourire staff

キャリアの転機となる産休・育休についての最新研究が、アイルランドのダブリン・シティ大学から先日発表されました。イギリスとアイルランドの300名の女性へのアンケートや28企業とのインタビューを通して、明らかになったこととは?

 

復帰後、消えた仕事

研究者のチームは、こんな話を聞いたそうです。

産休・育休に入る前に、上司に、「戻ってきたら今のクライアントは引き続き担当してもらうよ」と言われた。元の仕事に戻れると思って、晴れて復帰。早く復職したら、早く元の仕事をできると思ったら、大間違いだった。これまで担当していたクライアントからすべて外されたうえ、変わりに担当することになった人は、自分が以前、担当者だったことすら知らず。

日本でも、似たような経験をした女性は少なくないのではないでしょうか。

この研究でも、多くの企業では、女性の復帰後のサポートが不足しており、それが彼女たちの不満ややる気の低下につながっているとしています。

 

復職の前と後で変わる仕事への思い

研究の第一段階では、復職間近である、産休・育休中の300名の女性へのアンケートをおこないました。

このステージでは、回答者は子どもを預けることへの不安と同時に、職場復帰を楽しみにする声が多く聞かれました。特に、仕事のスケジュールにまた戻り、同僚たちと一緒に働くことを楽しみにしていた、と言います。

さらに、復職後の様子や傾向を知るために、第二段階では、28企業で調査を行いました。

金融、製薬、IT、航空など幅広いセクターの大企業が対象で、広く知られているグローバル企業も多く含まれていました。それぞれの企業で、産休・育休前の評価が最高レベルであり、6か月以内の復職した女性とその上司と人事部をインタビューしました。この聞き取りで、女性の多くは、復帰後、仕事への前向きな気持ちが著しく下がったと話しました。対象企業の多くでは、産休・育休は、望ましくない途絶として捉えられていたのです。

調査を通じて、復職した女性の多くは本来の仕事から外されたほか、職場の人たちの無意識なバイアスも働き、復職後の人間関係も悪化を辿った様子が浮かび上がりました。一方で、ポジティブな話も多く語られました。産休・育休は長いキャリアの中のひとつの出来事として位置付けるマネージャーの元で働く女性は、新たな価値をさらに提供しようと、やりがいを持って働いていました。

そして、研究の執筆者は、当該社員のマネージャー、そして人事担当者へそれぞれ3つのアドバイスを提言しています。

 

 

 

産休・育休から復職する社員のマネージャーへアドバイス

・復職した女性とコミュニケーションをオープンにとることが重要。休みに入る前から、産休・育休をどうアプローチするか話し合い、休み中の連絡方法や復帰時期について話し合う。さらに、休みに入る前、そして復職する際の引継ぎについても、具体的な計画を立てる。

・マネージャー自身の前提条件や価値観を取り除くことに注意し、当該社員とその家族の状況や優先順位を確認。仕事のスケジュールを変える必要がある人もいれば、そのままでいい人もいる。それぞれの状況を確認することが大切。

・出産、そして産休・育休後の復職までのプロセスは、個人差のある、人生において重要な節目であることを理解し、マネージャーは、そのプロセスに大きな影響を及ぼすことを自覚する。ミーティングの時間等、細かいことでも、実は大きな影響を及ぼすことがあると理解する(早朝や夕方のミーティングは、保育園の送り迎えがある親にとっては大変)。

 

産休・育休から復職する社員の人事部担当者へアドバイス

・産休・育休を、キャリア途絶ではなく、ちょっとした合間と捉える企業風土を醸成する。健全な企業風土は、顔を合わせることや時間でなく、結果にフォーカスしている。

・段階的な復帰を提案する。休み中からちょっとした“チェック・イン”をする時間をつくり、徐々に週3,4,5と働く日数を増やす。

・復職社員にメンタリングのプログラムを提供し、経験がありパフォーマンスも高い社員と、復職後の社員をマッチングする。グループでコーチングをする、または、互いに相談相手となる“バディ・システム”も有効。

 

コストをかけずに 働き甲斐のある組織に

研究者は、上記アドバイスのほとんどは、コストをあまりかけずに実施できると指摘しています。そして、まずは、企業の管理職が現状の産休・育休に対する考え方を認識し、どのようにして、それぞれが働きやすいか、対話を始めるべきだとしています。

スリールでは、このような最新の研究結果をみながら、より効果的なプログラムになるよう、必要に応じて、研修・講演内容をアップデートしています。「もっとこの分野についての実証研究を知りたい」など要望がありましたら、記事にしたいと思いますので、ぜひご連絡ください。

 

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