[インタビュー]企業

大阪ガス株式会社:5年間、本気で社員に寄り添った意識改革とコミュニティ作り

2014年から5年間、スリールのプログラムを総合的に導入いただいている大阪ガス株式会社様。人事部ダイバーシティ推進センター所長 江本雅朗さん、副所長 伊藤郁恵さんにインタビューを行いました。 大阪ガス株式会社様は、2014年に「大阪ガスグループ(現・Daigasグループ)ダイバーシティ推進方針」を打ち出し、女性活躍が今後の経営基盤の柱と設定。2013年度から「なでしこ銘柄」に5年連続選定されるなど外部からも高い評価を受けています。会社としてスリールのプログラムをどのように位置付け、活用されてこられたかを伺いました。

公開日:2018.10.26更新日:2023.12.25sourire staff

ダイバーシティの第一歩、「育児中社員」にスポットを当てたことで見えた、意識改革の必要性

—2014年から、総合的にプログラムを導入していただいています。導入のきっかけを教えてください。

(右)大阪ガス株式会社 人事部ダイバーシティ推進センター 所長 江本雅朗さん(左)大阪ガス株式会社 人事部ダイバーシティ推進センター 副所長 伊藤郁恵さん

2014年にダイバーシティ推進センターが発足された際、ダイバーシティには多様な対象がある中で、弊社はまず「女性活躍推進」にフォーカスし、その中でも育児中社員に対してスポットライトを当てました。子育てをしても長期的にキャリアを継続できることを目標に、総合職の女性をターゲットに、大規模ヒアリングを行いました。その中で出てきたのが、職場復帰をする前からの「仕事と子育ての両立への不安」や、「子どもを預ける罪悪感」というキーワードでした。

具体的には、両親が遠方で実際に親戚などの助けを受けられないという状況が多いうえ、ベビーシッターなどの外部サポートを利用することへの抵抗感や罪悪感がある中で、「仕事と子育ての両立はできるのだろうか?」「自分一人で全て実施するのは無理…」と女性社員は不安を抱えていました。固定観念や両立不安をまず払拭していかないと、キャリアを継続していく女性が増えないと考え、具体的な施策について悩んでいる際に、スリールさんのユニークな取り組みを知りました。

初年度に導入したのは、育児休業中の社員向けの「復職支援セミナー」と「ワーク&ライフ・インターン」でした。まず「復職支援セミナー」は、育児休業中の社員への意識改革として大きな効果がありました。外部サポート導入に対してのネガティブイメージが払拭された事と同時に、キャリア意識にも変化があったのです。育児休業者たちは、セミナーの中で数年後の自分自身について問いかけをされたことで、はじめて“数年後、自分はなにをしたいのか”と気づきを得られたようです。セミナー受講者からも「キャリアについてちゃんと話すことができ自分の中の想いが固まった」という声もありました。復職支援のセミナーがキャリア教育にもつながることに気づけたのは大きかったです。

また、大学生が弊社の育児中社員の自宅に行き「仕事と子育ての両立体験」を行う、企業向けの「ワーク&ライフ・インターン」。このユニークな取り組みに最初は驚きましたが、社員の意識改革に繋がるのではないかと考え、導入を決めました。もともと「ワーク&ライフ・インターン」は“学生のためのインターンプログラム”という印象を持たれがちですが、弊社は導入当初、“社員のための子育てサポートプログラム”として位置付けていました。しかしながら、実際にワーク&ライフ・インターンの学生を受け入れた社員が、学生の方とのコミュニケーションを通じて、キャリアへの“気づき”を得られるという予想以上の効果を得ることができました。学生に「仕事・子育て」についてヒアリングをされることで、「私はこんな風にキャリアを考えていたんだ!」と自分を振り返り、客観的に見る事ができたのです。実際に短時間勤務を繰り上げたり、育児休業期間を短縮して復帰するという事例も出てきました。導入当初は、お子様を学生に預けるという部分で若干不安もありましたが、体験後には非常に価値の高いプログラムだと実感し、その後も毎年継続しています

プログラム導入前の育児中社員たちは、「外部サポートを使ってまでキャリアを積む必要があるのか」とモヤモヤしていました。一方、会社としては、育休最大3年取得を2002年度から導入したり、短時間勤務制度を取り入れたりと、制度は充実させていて運用実績もあったので、なんとかなるのではという思い込みもあったのです。それが、2014年に導入した「復職支援セミナー」と「ワーク&ライフ・インターン」により、制度を作るだけではなく、社内でしっかりと浸透させるためには、社員への意識改革の必要性と、会社の制度も改善の余地があることを認識しました。人事部としての方向性にも合致する部分があり、2年目以降も導入をつづけています。

 

 

意識改革が進むと、社員が人事部のサポーターになってくれる

—2年目以降のプログラム導入について教えてください。

初年度に効果の高さと必要性を感じ、2 年目も同様に「復職支援セミナー」と「ワーク&ライフ・インターン」を行いました。3 年目からは、「メンタリング・プログラム」等、女性活躍の包括的なアドバイスも含めてお願いしています。また4 年目には、「復職支援セミナー」を上司に対してまで拡大し「育児勤務者×上司フォーラム」としました。この施策は、メンタリング・プログラムとともに、上司の理解を深める施策として役立っています。

5年間、継続した施策を行っていると、社内の意識やコミュニティの広がりが見えて来ました。育児中の先輩社員同士での繋がりも強まっており、先日行った育児中社員のランチ会には、30名の男女の社員が集まりました。仕事の効率化や、イヤイヤ期や小1の壁の乗り越え方など、仕事と子育ての両立ノウハウをリアルに交換しました。様々なリソースを活用しながら、「子育てしながらキャリアアップしていく」と言う意識が高まって来ていることを肌で感じています

2017年から行っている「育児勤務者×上司フォーラム」。上司と部下が、お互いの立場を入れ替えたロールプレイを行い、相互理解を図り本音で語り合う仕掛けを行っている。

育児中社員のランチ会では、それぞれの悩みをテーマに別れて情報交換をしている。男性社員の参加者も多く、意識改革が進んでいることを感じる。

 

メンタリング・プログラムの効果を教えてください。

自社で実施していた最初の2年間は、運用が難しく、思ったような効果が得られなかった為、3年目からスリールさんにサポートをしてもらっています。改善した点は、主にメンタリング内容の共有方法とグルーピングです。導入当初は、メンティとメンターが1対1で個別で進めていく方針でした。しかし、個別の活動では人事部からのサポートが難しく、うまく進めていないケースもあったようでした。そこで、個別のメンタリングの活動内容をイントラで共有したり、人数の構成をペアを5つ集めてグルーピングを行うなどしました。メンティー同士が切磋琢磨し合って自主的な活動が増えたり、他のメンターとの関わりを作ることで多様なロールモデルとの出会いを創出しました。またメンターがメンタリングに悩んでいる際のフォローアップも行うことで、メンタリング・プログラムはかなり活性化しました。

また管理職の意識にも変化がありました。弊社はメンターが全員男性管理職なのですが、彼らの意識が明らかに変わってきているのを実感しています。例えば、「ダイバーシティの重要性が自分の中で腹落ちした」という声や、「女性ならではの悩みに気づけた」などの具体的な意識の変化です。現在通算100人弱の管理職が、メンターを経験しているのですが、管理職の立場でダイバーシティを理解して推進者になってもらうことで、人事部のサポーターになってもらえているという実感があります。この点はすごく重要であり、ダイバーシティを推進していこうという組織の風土の醸成に大きく役立っていると考えています。単純な管理職研修ではなく、実際に関わって貰うことの大切さを実感しています。

 

–人事部への評価はどのように感じていますか?

ダイバーシティ推進を、人事部としてアプローチすることで、社員は「自分たちに関わってもらっている」「ケアしてもらっている」という意識を持ってくれていると感じています。例えば、育児休業中に社員が疎外感を感じたり、会社と離れてしまうという感覚を持っていた部分に対して、プログラムを導入したことで、会社として一定の関与ができるようになったと感じています。また外部からの評価として「なでしこ銘柄」に5年連続選定されるなどという実績も、会社としては大きな影響があると感じています。今後は妊娠中の面談への注力や、更に育児中や上司だけではない社員全員の意識改革へも広げていきます。

 

社員に寄り添った制度改革が、激動の業界を乗り越える布石になる

—大阪ガス様が行ってきた制度改革について教えてください。

以前から、制度は十分整えてきていましたが、プログラムを導入することで社員の本音を聴く機会が増えてきました。そうすると、ただ制度が整っていることが重要なのではなく、「子育てをしても長期的にキャリア継続・キャリアアップする」為に活用しやすく作り替えることの重要性を感じました。

その為、2014年にプログラムを導入した後は、制度改革にも注力をしました。育児介護短時間勤務でのフレックス制度導入(2015年)、週1回の在宅勤務制度(2016年)、サテライトオフィス導入(2016年)などの対策です。どの施策も以前からも実施の検討がされていましたが、社員の声にしっかりと寄り添う施策をということで、改革に踏み切ることになりました。

実際に導入してみると効果は高く、なかでも短時間勤務フレックス制度は、仕事をしたい子育て社員にとって、繁忙期などの調整が可能となり、働きやすさが格段に向上しました。在宅勤務はまだまだ利用数は少ないですが、取り組むべき課題の一つとしています。できるだけ時間と空間のフレキシビリティを確保して、成果を上げられる環境づくりが目標です。

 

 

—今後の展望をお聞かせください。

働き方改革を進めていくのはもちろんですが、いまエネルギー業界の大変革が進み、関西は首都圏以上に競争が激化しています。今後の展望として、社員の働きやすさを高め、生産性を上げることはもちろんですが、若手の優秀な人材をいかに確保するかといった採用面にも力を入れなくてはいけません。実は、採用の視点からの「ワーク&ライフ・インターン」にはとてもメリットがあると感じており、最近は自社の魅力や働き方などを知ってもらう施策として大きな効果が出ています。多種多様なインターンが存在しているなか、「ワーク&ライフ・インターン」は学生に対するアプローチとして他社との差別化に大いにつながっています。なにより、会社の仕事を体験してもらうのが目的のインターンが圧倒的に多いなか、「ワーク&ライフ・インターン」は仕事だけでなくプライベートもリアルに見せるという、会社にとっても覚悟のいるインターンです参加学生からは「長期的に働くことを、ここまでリアルに見せてくれた会社は初めて」「良い点も改善点も分かった上で、納得して就職したいと思えた」などの声が上がっています。実際に、参加者の中から内定者や入社する者も出ており、採用面でも期待できるプログラムだと確信しています。

このように、ダイバーシティ推進センターが発足した当初から、「女性活躍推進」にフォーカスし、その中でも育児中社員にスポットを当てて施策を進めてきました。5年間、地道に活動を進めていく中で、「育児中社員」から「上司」の意識改革へ広がり、さらに全社員も含めた働き方の施策や意識改革にまで段階的にシフトしようとしています。弊社はダイバーシティを経営戦略に位置付けていますが、社会が急速に変化する中で、多様な全ての社員がイキイキと働ける環境をつくることが、イノベーティブな意識を高める上でも重要だと考えています。

 


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