コラム

大手企業126社の人事担当者が回答!アンケートから探る、人事部にありがちな女性活躍推進の落とし穴

人事部は、女性活躍推進をどう捉えているのか。大手企業126社の人事担当者が回答したアンケートの結果が出てきました。今回のアンケートは、若手女性を対象とした両立不安白書のアンケート項目と合わせて、特にギャップが大きかった点に注目し、人事部担当者様が陥りがちなポイントについて解説します。

公開日:2018.11.02更新日:2023.06.20sourire staff

人事部は、女性活躍推進をどう捉えているのか。
日本CHO協会が実施した大手企業126社の人事担当者が回答したアンケートの結果が発表されました。
今回のアンケートは、両立不安白書の調査項目と対応させ、働く女性個人の意見と、人事担当者の認識のギャップがわかるよう、共同で作成しました。
【日本CHO協会】2018年7月 女性活躍推進に関するアンケート結果

両立不安白書の調査は、23~47歳の女性498名へのインターネット調査(2017年)に回答した中で、「出産をしていない働く女性」347名の回答結果を分析し、白書という形で公表しています。
「両立不安」は、スリール株式会社の造語であり、「仕事と子育ての両立に直面する前から不安を抱えてしまうこと」を言います。本白書では、「子どもを育てながら働き続けたい」と回答した人が約90%いたにも関わらず、「仕事と子育てを両立することに不安を感じた経験がある」と回答した人は92.7%にも上り、多くの女性たちが仕事と子育ての両立を望む一方で不安を抱えていることが明らかになりました。

現在、全国で約50%の女性が「第一子出産後に離職」しています。また最近では、「育児休業後に復職はしても、モチベーションが上がらずに仕事をしている」や、「子育て前の20代の離職が多い」という企業の人事の悩みも多く聞きます。なぜ、このような現象が起きるのでしょうか。多くの企業のヒアリング・コンサルを行う中で見えてきたのは、人事部と女性社員の意識のギャップでした。

今回は、女性たちの本音の意識と、企業の人事部が認識している点において、特にギャップが大きかった点に注目し、人事部担当者様が陥りがちなポイントについて解説します。

 

仕事と子育てへの両立不安の認識のギャップ

両立不安白書の調査にて92.7%の女性は、仕事と子育ての両立に直面する前から、両立を不安に感じていると回答していました。

その一方で、大手企業の人事担当者のうち、「Q.(貴社の)女性社員は、仕事と子育ての両立に直面する前から、両立に対して不安に感じているか?」という質問に対して、「大いにあてはまる」と回答したのはわずか15%だったうえ、「あまり当てはまらない」と答えた人事担当者は約30%にものぼります。
9割以上の女性が、出産前から子育てとの両立を不安だと感じているのに対して、人事部の3割近くは、そのような両立不安を女性社員は感じていないと認識していました。まだまだ、女性社員の両立不安の実態を認識していない人事担当者の方が多いことが伺えます。

 

退職・転職の引き金に気づいていない人事部

さらに、両立不安白書の調査では、その不安から「退職・転職」を考えると回答した人は、50.4%に上りました。つまり「2人に1人」は、不安だけが原因で退職・転職を考えるということです。

一方で、大手企業の人事担当者のアンケートでは、「Q.(貴社の)女性社員は、仕事と子育ての両立不安が原因で、退職や転職を考えているか?」という問いに対して、「あてはまる」と答えたのは25%、「あてはまらない」と答えたのは73%にものぼります。これは、大きな認識のギャップです。実際は2人に1人が、子育てとキャリアの両立不安から退職や転職を考えているのに、ほとんどの人事担当者はその現象に気づいてないということです。

両立を希望する意識や、キャリアへの意識については、ギャップは低い

逆に意識が一致していた項目もありました。両立不安白書にて「こどもを育てながら働き続けたい」と回答した人は約90%いたのですが、人事部の回答でも「女性社員は、子育てしながら働き続けたい」と答えた人は「大いにあてはまる/まあまああてはまる」合計して99%にも上り、「仕事と子育ての両立」を希望する意識をしっかり捉えていることが伺えます。

また女性のキャリア意識についても、人事部との認識は一致していました。
「今の仕事が充実している」と感じている人は、両立不安白書では「80.3%」。人事部では「81%」でした。

また、「マネジメントを経験したい」と感じている人は、両立不安白書では「66.3%」。人事部では「42%」でした。一致まではいかないものの、ある一定の女性社員がマネジメントも経験したいと考えていることの認識はされている企業が多いということが伺えます。
女性社員のキャリアに対しての意識は認識しているものの「仕事と子育ての不安で、転職・退職を考える(キャリア意識が低下する)」という点までは考慮ができていないという状況が明らかになりました。

 

 

女性活躍推進施策の効果について

「女性活躍推進施策を通じて、現時点ではまだ効果が感じられないものはどれか」という質問に対して、最も多かったものが「女性管理職比率」と「女性社員全員のキャリアアップ」に次いで「男性管理職の意識改革」でした。まだ女性社員全体のキャリアアップや女性管理職比率を上げていくことへの全体の雰囲気が広がっていない状況が伺えます。

また、施策に対しての効果について「施策に対する満足度が高く、効果も感じられている」と感じているのは35件(27%)にとどまっています。次に多いのが、「反応がどうもよく分からない」という回答が28件(21%)。また施策を行っても「効果に繋がっていない」と感じている意見も多数出ています。効果を感じている企業がある一方、実際に施策を行っていても、反応がイマイチよく分からない、効果が感じられていない企業も多いことが現れています。

 

 

 

女性活躍推進のよくある事例

アンケート結果から、人事部と現場でのギャップや施策を行っても刺さっていない状況が明らかになっています。

実際に女性社員向けの研修や、ヒアリングを行うと、以下のようなコメントをよく聴きます。

「会社でのキャリア研修を受けたが、バリバリの真似できない先輩ばかり出てきて『自分にはできない』と感じた」

「今の時代、様々なキャリアップの方法があるはずなのに、管理職になることしか伝えられなくて、悩んでいる。」

「自分の周りのママ社員は、アシスタント業務になる方が多く、自分もそうなるのかなと思ってモチベーションが下がった」

 

これらは、上で紹介したように、企業は、女性社員のキャリアに対しての意識は認識しているものの、「『仕事と子育ての両立』への不安」でキャリア意識が低下するという点まで考慮ができていないため、女性社員の求める施策になっていないことが原因です。

女性活躍推進を進める上で、こういった女性社員の気持ちを汲み取り、施策に盛り込んで行くことが必要になります。

このあとは、人事部の方が陥りやすい3つのポイントをお伝えします。

 

落とし穴を乗り越えるための3つのポイント

では、企業はどうすれば、このようなギャップを埋めることができるのでしょうか。
もし様々な施策を行っていても「イマイチ反応がわからない」「効果に繋がっていないように感じる」場合は、原因として 以下の3つが考えられます。

①会社の本気さが伝わっていない

②人事担当者が当事者の声をリアルに聞けていない

③両立不安が払拭されていない 

①会社の本気さが伝わっていない
まず、会社のホームページに「女性活躍推進」と書かれているものの、なぜやるのか、会社として意義を社員に発信できていないことが多いです。経営者は女性活躍を経営戦略と位置づけ、管理職は日々の業務で実践していく状況をつくる必要があります。施策が身近にあり、経営者、上司、人事部長らが一貫して言い続けることが大切で、「社長が言った、上司も言っている、社内報でも見た、うちの会社は本気だ」という状況をつくることが重要です。

②人事担当者が当事者の声をリアルに聞けていない
人事部がアンケートや数字でしか把握しておらず、社員とのコミュニケーションがないことです。根本的な課題を抽出する前に手段を決め付けてしまうと、「やったが、効果なし」となってしまうのです。定量調査の前に定性調査をやり、ヒアリングすることが大切ですが、実は子育てが初めての人に「何が欲しいのか」と聞いても、答えられないことが多いです。「キャリアを続けていくために何がネックになると思うか」「時間制約がある中で仕事するためには、どうすればいいか」を個人の生活単位で理解していくと、どういう仕組みや意識がネックになっているのか、構造が明らかになっていきます。定期的に調査・ヒアリングをして、施策の効果を把握し、更新しなければいけません。

③両立不安が払拭されていない
最後は、女性社員個人の意識の問題です。女性自身が「仕事と子育てを自分だけで実施しなければいけない」という固定観念から、サポートを適切に活用できなくなってしまう事に繋がります。例えば、保育園以外の子育てサポートを利用している人は、サポートを希望した人の10%しかいません。その理由は心理的ハードルで、子どもを預けることへの罪悪感が挙げられます。会社側としては、社員の要望に応じてつくった制度なのに、あまり使われないなら「実施をする意味がない」と感じるようになるのです。
※子育てサポート利用への罪悪感については、こちらの記事をご覧ください。【女性の脳内構造その3】プライベートの悩みは果たして、個人の問題なのか?

固定観念が女性側にも上司側にもあると、いい会話はできません。「子どもがいたら、アシスタント業務がいいかな」と上司から言われると、「本当は頑張りたかったけど、そう言われるのか」となってしまいます。「自分はこういうふうに仕事をしていきたい!」と部下が言い、上司も「あなたを評価している。一緒に頑張っていこう」となれば、発展したコミュニケーションができるようになります。

 

弊社の両立不安白書と大手企業126社への調査でも、大きなギャップが現れていましたが、これらの認識の違いは、日々の円滑なコミュニケーションによって乗り越えられる点が多いです。スリールでは、このようなコミュニケーションがいかに難しいか認識したうえで、より良いものにするため、研修でロールプレイイングなどを取り入れ、互いの理解を深めています。発展したコミュニケーションと言われて、ぴんとこない方、是非、一度お問い合わせください。

 

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