コラム

“バリキャリ”なんてもういない ワーキング・マザーの働き方の認識、間違っていませんか?

376名のワーキングマザーへの“ぶっちゃけどう働きたいか”アンケート調査の結果が出ました。マネージメントを経験したいと回答した人は80%にものぼり、ワーキングマザーのキャリアアップの志向が明らかに。違いは、環境によって組織において、どう行動が変わるかです。企業の方に参考になるよう、詳しくスリールで分析を行いました。

公開日:2019.03.12更新日:2023.06.20sourire staff

 

今の働く女性は、“バリキャリ派”か“ゆるキャリ派”か。
そんな属性で女性と仕事を語る記事をよく見かけます。企業の人事部からも「バリキャリが少なくなっていて・・」という言葉を聞くこともしばしば・・・このような安易な“派閥分け”で女性の働き方を考えること自体が、現状認識の誤りを生み、間違った施策へと繋がっているのではないか。

そんなことを改めて浮き彫りにするデータを、スリール(株)で調査しました。

ワーキングマザー376ぶっちゃけ自分はどうしたい?

2018年11月から12月にかけて、ワーキングマザーを対象に働き方の本音調査を実施しました。
約2ヶ月で503名の方に回答していただきました。有効回答者の人数は376名で、役職の分布は以下の通りです。

2017年に東京都が行った「男女雇用平等参画状況調査」での女性管理職比率は、【役員:6.8%、部長:6.5%、課長:9.6%、係長:25%】です。
今回のアンケートに回答した層は「部長課長役員:17.0%」と、やや一般よりも「部長課長役員」の比率が少なめですが、東京都の調査とほぼ同程度の割合であると言えます。本アンケートでは、回答者全体の結果と共に、属性で区切った分析も行い、役職による意識の違いも含めて分析しています。

<回答者376名の属性>
部長課長役員:17.0%
リーダー:30.6%
一般社員:45.7%
フリーランス:6.6%

 

すべての役職で「バランス重視」派圧倒的多数

 

グラフ1:生き方・働き方に対する価値観


 「ご自身の価値観として、最も近いものをお選びください」という質問に対して、9割の女性が、「仕事も子育てもバランスを取りたい」と答えています。これはもはや驚くような結果ではないが、役職レベルの人も含めてほぼ全ての人が「仕事も子育てもバランスを取りたい」と考えているのです。「バランスを取りたいというのは、仕事へのやる気がない。」「管理職へのやる気がない。」そんな誤ったとらえ方をしていませんか。現代の女性たちの働き方の価値観について、しっかり理解できているかが、重要なポイントです。

 

96%もの女性が「キャリアアップ」志向あり

回答者のうち96%もが、キャリアアップをしたいと考えています。さらに、「求められれば、マネジメントの役割を経験してみたい」と回答した人は、80%にも上りました。つまり、「仕事を重視して働きたい人」だけが、仕事へのやる気があり、キャリアアップをしたい人ではないのです。仕事と家庭の両立をしたいという考え方は、キャリアアップをして、マネジメント経験を得たいという思考と、共存するということです。

 

グラフ2:キャリアアップに対する考え方

 

次は、キャリアアップする際の環境について着目していきます。

「自力で環境を整えて、キャリアアップしたい」したいと答えた人が54%、「環境が整えば、キャリアアップしたい」と答えた人が42%でした。

「自力で環境を整えて、キャリアアップしたい」とは、例えば、自分で周りと掛け合いながら、プライベートの環境や職場環境を整え、キャリアアップをすることです。特筆すべき点としては、役職についている人やフリーランスの人の多くがこの選択肢を回答しており、自分でキャリアアップをしていきたい意向が強いことがわかりました。

また、「環境が整えば、キャリアアップしたい」人とは、例えば所属する組織の制度や施策を活用しながら、与えられた環境でベストを尽くしていくような考え方です。今回のアンケートでは、リーダーや一般社員の人がこの選択肢に多く回答する傾向が見られました。また一般社員のうち、55%が「ライフステージに合えばキャリアアップしたい」と回答しています。

 

ライフステージに合ったキャリアアップ環境を提供できるかが鍵

特に一般社員の女性を引き上げて、本人たちの能力を最大限に発揮させるためには、ライフステージに合ったキャリアアップの環境を作ることがポイントであると言えます。

特に女性の働き方を考える上では、ライフステージ・環境・評価の3つの要素が大変重要になってきます。つまり、「ライフステージ」に合わせて「働き続けられる環境」があり、「正当に評価」されることがポイントなのです。上記の表は、女性が管理職になるまでの意識のステップを示したものです。女性管理職比率を上げたいと思い、突然管理職に登用しても意識がついてこない場合が多くあります。4つのステップで、少しずつ意識の階段を登っていくものだと理解する必要があるのです。

①この会社で働き続けたいと思う

②(子育てしても)働き続けられるかもと思う

③(子育てしながら)働き続けようと思う

④働き続け、キャリアアップできると思う

 

妊娠、出産、育休、復帰、育児という大きなライフイベントを迎え、制約も訪れる中、単に仕事へのモチベ―ションだけでは乗り切れない状況が訪れます。育児休暇などについても、いかに休ませるのかという‟配慮”から、‟いかに働き続けられるのか”というマインドセットが管理職に不可欠です。

例えば、オフィスでの物理的な滞在時間や、クライアントとの対面時間が評価されるような職場環境の場合、子どもがいると時間の制約が出てしまい、どうしても時短勤務を取る必要が出てきます。そうすると責任が軽い仕事になったり、評価も下がっていきます。そのような環境に置かれると、「もう少し働きやすい環境を探すべきかもしれない」「自分には管理職なんて、到底ムリ」など考えるようになってしまいます。そうなると働き続けられることができても、前向きに自信をもってキャリアアップするのは難しくなります。つまり、「ライフステージ」に合わせて「働き続けられる環境」があっても、「正当な評価」には繋がっていないことで、その先の活躍のステップには行けなくなってしまうのです。

本来あるはずのマネジメントへの意欲が減少したり、より働きやすい環境を求めて転職を考えるきっかけにもなります。「環境が整えば、キャリアアップしたい」と答えた42%の女性に対して、ライフステージにあった環境を提供し、モチベーションの向上を図る好循環を組織として生めるかどうかが、組織として人材の最適な活用ができるかどうかの、分かれ道となっているのです。

 

ライフステージに合ったキャリアアップの環境とは

IBM Smarter Workforce Instituteが米国とイギリスで行った調査によると、職場の良い環境と、プライベートとのバランスは、仕事への満足度を上げ、離職率を下げるほか、従業員のキャリアアップを加速させるという結果が出ていました。フレキシブルな勤務時間を利用できている従業員は、そうでない人と比べて、昇進率が約10%高い。また、米国で実施された別の調査では、現在働いていない女性のうちの67%は、フレキシブルな勤務時間が許容されるのであれば、仕事に戻るだろう、と回答してます。

 

本アンケートと合わせて座談会も行いながら、この「ライフステージに合ったキャリアップの環境」とは何なのかを深掘りしてみました。座談会の中で出てきた意見としては、「育児や介護などの一時的なプライベートでの出来事」が起きる時期を「ライフチャレンジ期」と呼び、そのタイミングでは成長のスピードを緩やかにするが、その後しっかり成長路線に戻れる環境が必要であるということでした。現状では、一度ライフチャレンジ期を迎えると、その後二度とキャリアアップの路線に立つことができないことが多く、成長を諦めざるを得ない体制があります。しかし子育てをしている中でも、独身時代と同じような成長曲線をたどっていくことも、厳しい状況であるのも事実です。その為、ライフチャレンジ期は成長のスピードを緩やかにしながら、そのライフチャレンジ期が過ぎたら、頑張りによってキャリアアップの土台に立つことができる。長期的に仕事を継続したいからこそ、多くのライフステージに対応できる環境を求めていると言えます。

「子育てとバランスをとりたいなんて、“ゆるい”」。そのような考え方では、間違いなく人材流出が加速していくことでしょう。また、働く女性としても、バリバリいくか、ゆるくいくか、そんな2択コースではなく、自分たちが「理想のライフキャリアを実現する環境」を築いていく必要があります。

子育て中の社員から、新しい働き方を「学ぶ」精神

 

上記のような環境は、どうやってつくればいいのかという質問をよく受けます。特に人事部や管理職として環境改善に取り組む中で、はまりがちな落とし穴は育児中の方に「やってあげる・配慮する」精神に突き進んでしまうことです。多様なスキルセットを持ち、それぞれ異なるプライベート環境を持つチームの効果的なマネジメントやチームビルディングを行うには、「学ぶ」精神が必要です。

実際に3年ほど実施をしている育ボスブートキャンプでは、実際に育児中の方と同じ体験をして貰います。16時に会社を退社し、保育園にお迎えに行き、ご飯を作り、こどもと遊んだり、翌日の準備をしていく。このような経験をすることで、仕事の中で無駄な会議を減らしたり、できるだけ効率的に実践をするようになったり、子育て中だけではない多様なプライベートを持つ部下の背景を理解することができるようになります。実際に育児中の社員の経験をすることが、実は「時間制約があっても働けるチームづくり」や「多様な背景を理解するマネジメント」に繋がっているのです。
環境を整えるというのは、むしろ仕事と子育てと両立している社員から「学んで」、組織改革を行う機会と捉え直すマインドチェンジが不可欠なのです。子育てをダイバーシティの第一歩と捉え、多くの人が働き続けられる環境にし、強い組織を作ることが必要になります。

「バリキャリ」なんて、もういないのです。プライベートも仕事も両立したい人は、女性に限らず、男性でも当たり前になっています。企業は、制約がありながら働いている人たちから学び、チームとしてよりよい環境を考えていく必要があります。そんな余裕がない、と思っている管理職は多いかもしれません。しかし、そうでもしないと、せっかく育てた人材はより良い環境を求めて、転職をし、人材流出による更なる危機が訪れてしまいます。この数年が勝負どころなのです。

 


スリールでは、「子育てをしながらキャリアアップできる人材と組織の育成」とテーマに、女性の心理を徹底的に分析した講義や、擬似体験型ワークを取り入れた実践的な研修を提供しております。
ご興味のある方は、以下までご連絡ください。

 

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