コラム

メンター制度導入で女性活躍を促す方法とは?実際の導入例を元に解説!

人材育成の手法として注目を浴びるメンター制度。社員自身のキャリアに対する意識を面談を通して、具体的なアクションに落とし込み、実現をサポートするその仕組みは、実は女性活躍推進にも効果的な手法であると言われています。メンター制度を運営する際どのような点に気をつければ良いのでしょうか?実際の事例を用いながら解説します。

公開日:2019.03.04更新日:2023.06.20staff

メンター制度とは

 メンター制度とは、経験豊富な年長者がメンターとなり、アドバイスを受ける人(メンティー)との間で定期的な面談(メンタリング)を継続して行うことをいいます。メンタリングでは対話による気づきと助言を通してメンティーのキャリア形成を助け、自律的なマインドセットを整えることを目指します。
 多くの企業が人材育成の手法の一つとしてメンター制度を導入するなか、近年ではダイバーシティ・マネジメントにメンター制度が有効であることから、女性活躍推進の目的でメンター制度を活用する企業も近年増えてきています。

女性活躍推進にメンター制度がどのような効果をもたらすかをご紹介する前に、まずは女性社員が自身のキャリアに対してどのような意識を持っているのかを整理していきたいと思います。

 

女性社員は、キャリアアップしたがらない?

 女性活躍推進が世間でも広く求められていますが、一方で「女性社員側が昇進したがっていない」「管理職になりたがらない」という意見も聞かれます。

 管理職になりたくないという女性社員にその理由を聞くと、「仕事と子育ての両立ができなさそうだから」「リーダーシップを取ることが苦手だから」「仕事の責任を増やしたくないから」という意見が聞かれます。これには、女性のキャリアアップを阻む「個人の意識」の壁や「組織風土」の壁の存在が関係しているのです。

 

「個人の意識」の壁

仕事と子育ての両立不安の意識

 女性社員は、出産や育児などのライフイベントを強く意識する傾向にあります。若手社員であっても、ライフとキャリアの両立に対する不安は抱えており、女性社員は先読みで考える傾向にあるためキャリアに対する不安も先取りしてしまうことが多いのです。

 また、将来子どもを持ちたいと考えている女性にとって、出産までのタイムリミットに対する意識も強く、「○歳までに子どもを持つには△歳までにどのくらいのキャリアを築けばよいのか」と出産に対する締め切り意識からキャリアに対する不安を抱えやすくあります。

※詳細については、【女性の脳内構造その1】2人に1人が転職・離職を考えるワケをご覧ください。

インポスター症候群

 インポスター症候群とは、何かを達成したり成功したりしたとしてもそれを自分の実力だと肯定できない傾向のことを指します。 自分の能力を自己肯定できないために、「自分は他者よりも劣っているからもっと頑張らないと」と過剰に自身へプレッシャーをかけてしまう場合や、反対に「どうせ人よりも能力がない」とキャリアアップを諦めてしまうという行動を取ってしまう場合もあります。

アメリカで行われた研究では、女性が男性より劣るというステレオタイプがある仕事の場合、女性は男性に比べて自分の能力をより厳しく評価したほか、自身に課すレベルをより高く、厳しくする傾向があることが明らかになっています。
(Shelley Correll, “Constraints into Preferences: Gender, Status, and Emerging Career Aspirations,” American Sociological Review Vol 69, Issue 1, 2004)。

つまり男性と女性の能力が一緒の場合でも、女性の方が自分の評価を低く提示してしまうということです。特に重要な点は、そのような行動は「女性が男性より劣るというステレオタイプがある仕事」の時に強く表出し、またそのような仕事に対して女性の関心は低下するということです。

 

「組織風土」の壁

上記のように女性に出やすい意識の傾向をご紹介しましたが、起きやすい「環境」にいることで表出することが多いです。例えば男性中心で構成されており、女性に自信を無くさせたり、不安にさせてしまうような組織文化があ場合には、個人の意識の不安が増大していくのです。

仕事と子育てに両立に対する組織風土の壁

 ライフイベントを踏まえてキャリアプランを立てる女性社員にとって、仕事と子育ての両立を支援する文化が職場にどれだけ根付いているかは就業継続やキャリアアップを望む際の大きな障壁となります。例えば、昇進している女性が子どもがいない方ばかりだったり、逆に子どもがいる方が責任が大きくない仕事ばかり任されている環境だと、自分が「この会社で働き続けてキャリアアップするイメージを持てない」という意識になってしまいます。無理やりロールモデルを作る必要はありませんが、子育てをしてもキャリアアップする形を「会社側が整備しようとしているか」が伝わっているかが重要になります。

チャレンジの機会や経験不足の壁

 これまでに女性社員が性別を問わず、公平にチャレンジの機会を与えられたり経験を得られているかの壁も存在します。チャレンジの機会や経験の場を十分に与えられていない場合、インポスター症候群のように自身の能力や成功を肯定できず、「自分は責任のある立場につくような人材ではない」と過小評価してしまうことが考えられます。例えば、昇進の試験を男性には打診をしたのに女性には打診をしない。飲み会や喫煙所などの場で、自然に「期待をしている。昇進を目指すように」など話をしているなど。日常の何気ないタイミングでの声かけを、無意識に男性にだけに行っていることがあります。「女性はリーダーになりたがらないもの」と、マネージャー自身が固定観念を持っている場合があります。

リーダー神話の壁

 「リーダーとはこうあるべきだ」という価値観が組織内で固まってしまうことも、女性社員にとっては昇進の際のプレッシャーであると考えれます。自ら先頭に立ち、力強くチームを引っ張ることだけがリーダーシップではなく、一人ひとりの個性を生かしたリーダーシップのあり方が存在します。そのようなリーダーシップの多様性に対する理解の壁に女性は直面しやすくあります。男女問わず、多様なリーダーに出会える環境があるのか?その人のやり方でリーダーが務まることを、マネージャーが支援しているのか?こういったフォローの環境があるのかが重要になります。

 上記のような「個人の意識」や「組織風土」の壁に阻まれる中で、自然と女性社員が自らキャリアアップを望むことができない環境が作り出されてしまっているのです。

 

女性の管理職希望の意識

では、女性たちは本当に管理職になりたくないのでしょうか?スリールの調査にて「子どものいない働く女性」約350名に調査をしてみたところ「66.5%」もの人が「求められれば、マネジメント(管理職)を経験してみたい」と答えました。ここでのポイントは「求められれば」という点です。しっかりと自分の能力を評価してもらい、打診してもらえれば管理職にチャレンジしたいということなのです。上記に紹介した「インポスター症候群」から、何も打診せずに管理職を希望する人はとても少ないのは明らかです。だからこそ、女性社員をキャリアアップするには、背中を押すことも重要です。

また、管理職・リーダーになった後ではどうでしょうか。
トーマツ イノベーションが立教大学の中原淳准教授と共同で調査研究を行った、役職の異なる男女5,400人超に対して行った調査では、「リーダーになってよかったと思う」と回答した女性は73.6%にも上り、男性の割合にも高く出たのです。リーダーになった後に充実感を感じている女性社員が多いことが伺えます。

このような調査から、女性社員は管理職になりたくない訳でも、向いていない訳でもありません。ただ、その環境が整っていないということを前提として、キャリアップを支援する仕組みを作ることが大切です。

メンター制度の効果

女性たちのキャリアップを支援する仕組みとして、メンター制度はどのような効果を持つのでしょうか。実は、キャリア意識に変化をもたらすだけでなく、メンター制度は女性がキャリアを築く上で必要な様々なものを与えてくれます。

 それぞれを詳しく見ていきましょう。

 

効果1:自身の能力を客観的に理解することができる

 メンタリングでは、メンターとメンティーの1対1の関係で、メンティーのキャリアを共に見つめ伴走していきます。先述の通り、自身の成功や達成を自身の実力であると受け入れることができない傾向が見られる女性にとって、面談内の対話や他者から得られる自身のキャリアに対する助言は、自身のスキルや能力の現状をより客観的に理解する機会となることが見込まれます。

 自身の成功を受け入れることで自信につながり、業務へのモチベーションがアップすることや、現在の自分の能力を正確に把握することでキャリアアップの目標をより具体的に設定することにも寄与するでしょう。

 

効果2:メンターがロールモデルとしての効果を発揮する

 お伝えした通り、女性社員の傾向として、ライフイベントを見据えて早期から仕事と子育ての両立を意識することが言えます。メンターが先輩女性社員である場合、面談を通して自身の経験談や周囲の女性社員の実情を伝えることで、ライフイベントを踏まえたキャリア設計がより明確にできることが期待できます。また、子育て中の先輩社員がメンターであれば、出産後の自身の働く姿をイメージしやすくする効果も見込まれ、長期的に働き続けるイメージを明確化することができます。

効果3:女性社員を支えるネットワークが構築される

 メンターとして先輩社員とのつながりができることによって、そこからさらに新しい上下との関係性が生まれることが期待できます。メンターの先輩社員以外とのつながりを構築できれば、ロールモデルとなる社員が増えるだけでなく、メンティー社員の成長を見守る先輩の目が増えることにもつながります。また同期とのつながりも重要です。まだまだ女性管理職の割合が低い中で切磋琢磨していく同期がいることも心の支えになります。

 

効果4:メンティーが活躍の場を得るチャンスが広がる

 メンタリングを通して、メンティーがどのような意識を持って業務に臨んでいるかを知っている社員が増えることによって、メンティーの目指すキャリアに合わせた挑戦の場が与えやすくなります。若手のうちから自身が志すキャリアプランに合ったチャレンジが可能になることで、スキルの向上も見込まれます。

 

メンター制度で気をつけるべきこと

上記のような効果が見込まれるメンター制度ですが、実際に運営する場合にはどのような点に気をつけながら運営していけばよいのでしょうか?

 

メンティーに自ら語らせるような問いかけを行い、気づきを与えること

 メンタリングで主役となるのはあくまでメンティーですので、メンター側から答えを与えすぎないようメンティー自身の言葉で自身のキャリアを語れるように進めていくことが望ましいです。メンティーが主体性を持って自律的にキャリアプランを描けるようメンターは心がけましょう。オープン・クエスチョンを用いて、メンティーの考えを引き出し、傾聴する姿勢をメンターが持つことが必要です。

 

メンターの成功体験の押し付けをしないこと

 メンタリングでよくありがちな光景として、メンターが自身の考えをメンティーに押し付けてしまったり、自身の成功体験を話すだけで止まってしまうことが挙げられます。あくまでメンタリングは「指導」ではなく、対話による気づきと助言を与えるものです。

 自身の経験を具体例として用いることは積極的に行うべきである一方で、それを相手に押し付けずに最終的な目標設定はメンティー自身に行わせましょう。

 

他部署の上司をメンターとすること

 メンタリングでは、自身の現在の仕事に対する率直な感想やプライベートな話が含まれてくることが多くあります。そのような場合に、自身の直属の上司がメンターになると正直に話すことができない場面も出てくる可能性があります。

 メンティー自身の社内でのネットワーク構築の意味も込めて、メンターは斜め上の関係、他部署の上司であることが望ましいでしょう。

 

1対1の関係で完結させず人事や他のメンタリングペアへの情報共有を行うこと

 メンター制度を導入する際、メンターとメンティー間の1対1の関係性で完結してしまい、メンタリングの効果が現れているのか人事が感知できない場合や他のメンタリングペアがどのように進めているのかわからず、進め方に戸惑う場合などがあります。

 定期的に他のメンタリングペアや人事部を交えて、現在メンタリングがどのように進行しているのかの情報交換を行う機会を作ることが必要です。

 

 ここで、もう一度メンター制度運営の際に気をつけるべきことをおさらいしましょう。

【メンター制度運営のための注意点】

 ①メンティーの考えを引き出す問いかけを行うよう意識することで、メンティーが自律的に自身のキャリアに対する考えをまとめるよう促すこと。

 ②メンターの過去の経験がメンティーの参考になるように話しながらも、あくまで押し付けにはならないように心がけること。

 ③他部署の上司をメンターとすることで、メンティーが話しやすい環境を整えるだけでなく、メンティーが新たな人間関係やキャリアのロールモデルを得られるように整えること。

 ④人事や他のメンタリングペアとの情報共有を行い、メンタリングが1対1の関係に終わらず、相互に刺激を与え合う関係を築くこと。情報共有によって、人事がメンティーの成長を把握する仕組みを用意すること。

 

 以上の4つとなります。いかがでしたでしょうか?

 メンタリングは人材育成の手法として現在注目を浴びていますが、女性特有のキャリアに関する悩みにメンタリングは特にマッチする手法であることを本記事ではお伝えしてまいりました。

 また、メンター制度を運営する際にもただ今ご紹介したような点に気をつけながら運営することでただのおしゃべりに止まることなく、具体的なアクションを伴った、若手のキャリアプラン形成につながることが見込まれます。

 メンター制度を効果的に活用することで女性活躍を推進していきませんか?

 

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ぜひ、個人が活きる社内風土を一緒に作っていきましょう。

 
 

 

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