コラム

【インタビュー】あなたにとって“働く”とは? 〜元海外転勤帯同メンバー座談会(1)〜

“一度仕事を手放してしまうと復帰しづらい”、これまでにこうした言葉を耳にされた方は多いかと思います。確かに、現状では一度離職をしてしまうと離職前の環境・条件に戻ることは難しくなります。今回はインタビュー第二弾として、転勤帯同の後、日本に帰国後それぞれの道を歩まれている4人の方にお話しを伺いました。

公開日:2021.02.26更新日:2023.06.20staff

“一度仕事を手放してしまうと復帰しづらい(だから歯を食いしばってもしがみついた方が良い)”、ワーママをはじめ、これまでにこういった意味の言葉を何度となく耳にされた方は多いかと思います。

確かに、現状では一度離職をしてしまうとその期間がブランクと捉えられ、期間が空けば空くほど離職前の環境・条件に戻ることは難しくなります。また、これはパートナーの転勤など、自身のコントール範疇外の理由で離職を選択した人たちにとっては耳の痛い言葉です。

リクルートワークス研究所による「全国就業実態パネル調査」(2020)によると、直近2年間で退職を経験した人(単一回答)の退職理由として「パートナーの転勤」と答えたのは1.6%でした。(男性:0.1%、女性:1.5%)

2016年度の調査ではおよそ1.4%の人(主に女性)が同理由をきっかけに退職している結果となっていることからも、パートナーの転勤が以前からある一定数の退職理由として存在していることが分かります。

仕事内容への不満(男性:19.6%、女性:22.3%)や人間関係の不満(男性:20.2%、女性:22.8%)など回答率の高い他の理由に比べるとそこまで大きな割合に感じられませんが、だからこそマイナーな理由として見過ごされ、仕事や目の前の環境を手放さざるをえず悶々とした想いを抱える人たちがいることも事実です。

※ 調査対象:57,284名/15歳以上の男女/2020年1月9日〜1月31日/インターネット調査

 

さて、前回は海外転勤族のかなこさんに”環境を理由にせず自分らしく働くこと”についてお話しを伺いました。

今回はインタビュー第2弾として、パートナーの転勤(バンコク)に帯同した中で悶々とした想いを共有したり、メンバー内で自己啓発をしあう駐妻コミュニティに所属され、日本に帰国後それぞれの道を歩まれている4人の方にお話しを伺いました。

 

人との出会いが不安や悔しさを解消してくれた

スリール(以下、ーー)

本日はお時間をいただき、ありがとうございました。

パートナーの海外転勤に帯同することで大きな環境の変化を経験された皆さんですが、それまでの環境から精神的に手放すことが大変だったものはありましたか?

 

(あかり)私の場合は2年半会社の休職制度を使用したため、”手放した”という意味では手放したものはありません。逆に言うと、休職制度がなかったら帯同しなかったかもしれません。 

(あかね)手放しづらかったものは、自由です。駐在をきっかけには結婚した私は、それまで独身で自営業を営んでいた自由度の高い生活を送っていたため、突然の大きな環境の変化でそれまでよりも自由が制限されたことには少し堪えました。

また、パートナーの会社に納得してもらうまでのハードルはあったものの、現地で理解のある方との出会いがあり、現地採用として働くことができたので結果的に手放したものはありません。

(やすよ)私はパートナーが平均3年前後で異動があるため結婚と同時に仕事をやめていたので、「自分の想いとは裏腹に仕事を手放してしまった」という思いはずっと抱え続けていました。突然の異動など、予告もないまま会社に人生が決められてしまうことにストレスを感じ、転勤族は不自由だと感じていました。

バンコクでライフキャリアの考え方(”働く”とはお金を稼ぐことのみを指すのではなく、自分の力を社会に還元していくこと)や、本気で主婦をしている人たちとの出会いがきっかけとなり、徐々に自分を認められるようになったことでこれまでの思いが消化されていきました。

(ゆか)私は1回目の駐在帯同がイギリス、帰国後新しい環境に慣れたところでのバンコクへの異動辞令だったので、まずは人間関係などゼロから築きあげた当時の環境を手放す悔しさがありました。

また、1回目の駐在での経験から母親のメンタルサポートができたらいいなと思い、保育士の勉強を始めようとしたところだったためキャリアの視点でも中断せざるを得ないことが残念でした。

これらの悔しさは、渡航後に同じような思いを持つ人たちと繋がることで解消されました。

 

ーーズバリ、もしまたパートナーが転勤・駐在となったら皆さんは帯同しますか?

(ゆか、やすよ)ついていきます!

(あかり)再度会社の休職制度を使って、ついていきます!

ーーその理由は?

(やすよ)駐在帯同の経験から、一箇所にいるだけでは得られない出会いや経験があるということを知れたので。

ーーあかねさんはどうでしょうか?

(あかね)私は国内も含め、パートナーの転勤にはついていかないと思います。

我が家の夫婦の共通認識は、”互いが協力しあい、互いのキャリア形成をしていくこと”です。私は今、医学部への編入に向けて準備をしていますが、もし医学部に編入できた後にパートナーが転勤となったら、その時に子どもを育てられる側が子どもを連れていくという形を取るかと思います。また、編入した暁にはパートナーも転勤のない職種へのキャリアチェンジを前向きに考えてくれています。

 

周りの目より自分の想いが大事にされる社会

ーー日本とはまた違う価値観に触れる中で、今も大事にされている滞在国の価値観があれば教えてください。

また、皆さんお子さんがいらっしゃいますが、子育ての観点で感じたタイの良いところは何でしたか?

(あかり)タイは皆さん子供に優しいところが良いなぁと思いました。
子どもが泣いている時に、見ているだけでなく手を差し伸べてくれるのは精神的に助けられました。日本に帰国後は私も泣いている子どもを見つけたら何かそっとあげられるよう、いつもシールを何枚か手持ちで持つようになりました!

(一同)同じ意見です!子どもを大切にする空気は本当にありがたかったです。

(ゆか)これはイギリスでも感じたことですが、プライベートと会社の線引きがきちんとされているところや、会社よりも個人が優先される社会であることが良いなぁと思いました。個人が確立されているため、家族の時間を大切にされている方が多いですね。また、子どもを会社に連れて行くことも問題ない点なども子育てと仕事が両立しやすい環境だと感じました。

(やすよ)子どもを大切にする雰囲気の他にも、年配の人に敬意を示すところも素敵だと思いました。

”それぞれ自分の感じている性で生きていける”、”洋服は流行りに左右されるのではなく自分の好きなものを着る”など、良い意味で『人は人、私は私』という他人との線引きがあるように感じました。

(あかね)医療の観点から見ると、日本の医療は他の国と比べても医療のクオリティは優れているのに外国人に対して制度をはじめとして医療が開かれていないように感じました。対して、タイはメディカルツーリズムが成功しているので、見せ方が上手だなと感じました。これは実際に現地に住むことによって気付かされた点でもありました。

ーーいい意味で周りの目を気にしない(自分の想いを一番大切にする)点は、同じアジアでも日本との大きな違いなのかもしれませんね。他にはありますでしょうか?

(やすよ)思い通りにならなくても、その中で何ができるか?への切り替えの早さには驚かされました。

直近で言うと、プラスチック袋無料配布廃止への切り替えや、コロナ禍緊急事態宣言後、飲食店のデリバリー対応への切り替えなど、環境の変化に対する柔軟性が高いように感じました。日本はまず制度が整ってからではないと動きづらい中で、そもそも制度が整うまでも時間がかかるなど、その点に違いを感じます。

(ゆか)これはイギリスで感じたことですが、誰でも気軽に社会に貢献できる環境があることは素敵だと感じました。街中には個人商店も含めチャリティショップが沢山あり、そこでの収益は社会福祉にお金が還元されるという仕組みがうまく循環していました。

 

ーー駐在帯同中は”働く”ことについて真摯に向き合われた皆さんですが、今後の展望をお聞かせください。

(ゆか)今は自分の成長も大切ですが、それ以上に自分にできることをもって何を社会に還元できるかを考えています。

(やすよ)今後も主婦業は自分の意思で続けていきたいと考えています。また、ワーママを助けることでの社会貢献をしていきたいと思っています。

(あかり)いつかまだ見ぬ人の役にも立てるように、今はまず目の前のご縁・人と全力で向き合いたいと考えています。

(あかね)私の最終的なゴールは、世界中の女性を幸せにすることです。実は”自分の最期”だけは以前から決めていて、、、世界のどこか、女性の人権が無視されている村で自分の死後、村の人たちに惜しまれながら銅像を建てられて死ねたら良いなと思っています。

 

ーー死に方を決めているというの面白いですね!

ところで、皆さんは今後もパートナーの転勤など先が読めない環境にいるかと思いますが、人生設計はどこまで必要だと思いますか?

(あかり)まずは目の前のことだけを考えています。転勤族の我が家は転勤のタイミングで毎回その先のプランを見直さなくてはならなくなるため、先のことを詳細まで考えることはしていません。

(あかね)先ほどお話しした”最終的に目指している最期”に行き着ければ良いので、そこまでの道のりの詳細までは考えていません。

(やすよ)現実的には10年先までしか考えられませんが、70代後半の友人が10年先の具体的な目標を持ち続ける姿を見て、いくつになっても夢は持ち続けられる人でありたいと思っています。

(ゆか)子供の年齢によって1クール先の家庭の形を考えることはありますが、2クール先は細目でぼんやりイメージしています。目標達成を目指すならより具体的な内容や日程を考えることが必要かと思いますが、それで苦しくなってしまうくらいなら考えない方がいいかなと思っています。

 

ーー”今”を生きられている感じが、いい意味で肩の力が抜けた印象を生んでいるのですね。

最後に、皆さんにとって「働く」とは一言で表すとなんでしょうか?

(ゆか)生きること、生かされることだと思います。それは、お金を生む産まない関係なく、社会の循環の中にいると言うことだと思います。生き方は人それぞれでいいのだと、今改めて感じています。

(あかね)私も、生きることだと思います。その結果返ってくる形は、お金やチャンス、やりがいなど人それぞれ違うものだと思います。

また、「働くこと」は”はた”を”楽”にすることだと言われますが、自分が人に与えることのできる貢献度の大きさと人数を掛け合わせたものが自分の成長レベルの指標だと考えて、死ぬまで拡大させていきたいと思っています。

(やすよ)自分の大切にしたい生き方を表現する方法であり、それに基づいて納得できるように生きることだと思います。

(あかり)私も生き方そのものだと思います。駐在に帯同した当初は自分ではお金を稼げない状況に悶々とした時もありましたが、今は変化のある人生の方が面白い!と心から感じています。

ーーありがとうございました。

 

皆さんはじめは100%納得のいった状態での帯同生活ではありませんでしたが、それぞれが現地での人との出会いや文化を身をもって体感することで解消され、新たな気付きを得られていたように見えました。

スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提唱した『計画された偶発性理論』の中に、

個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定されるため、想定外の出来事を前向きに捉えて対応する経験の積み重ねでよりよいキャリアが形成される

という考え方がありますが、今回の座談会を通し、これは”仕事”という限定的な意味以外にも”人生”といったより大きな意味でも捉えることができるのではないかと感じました。

環境や状況に不満を感じるだけでなく、その時にできることを行動に移していくことは、環境の変化にただ流されるのではなく、”軸をもって”流されるために大切なポイントなのかもしれません。

 


スリールでは、個々人が「自分らしいワーク&ライフ」を実現し、笑顔で働く人が増える社会の実現を目指しています。

また、「子育てをしながらキャリアアップできる人材と組織の育成」をテーマに、講義や擬似体験型ワークを取り入れた実践的な研修を提供しております。

ご興味がある方はぜひこちらよりお問い合わせください。

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