突然ですが、皆さんは将来に対して不安やストレスを感じることはありますか?
SBI生命が行なった調査では、 将来について不安を感じる理由のトップは“病気”、次いで“災害” 、“事故”、“お金”と続きました。“病気”がトップ理由の背景としては、“働けなくなる”ことや“収入減”に関することと挙げられていました。
※上記調査結果より一部抜粋。調査期間:2019年8月30日~9月2日インターネット調査 調査対象:20~60代個人 有効回答数;1,000人
当たり前のことではありますが、“働けなくなること”というのはそこまでに人に不安を与えるものなのです。
病気で身体が思うように動かなかったり、制限のある生活を送らなければいけなくなることで“働けなくなる”ことのストレスは計り知れませんが、意欲や体力はあるのにある日突然働けなくなったらどうでしょうか?
今回はインタビュー第3弾として、パートナーの転勤に帯同後、日本に帰国し三者三様の道を歩まれている3名の方にお話しを伺いました。
皆さん転勤帯同中は様々な制約で働くことが叶わず、経済的にも自分の足では立てていないという想いを抱えながら、改めて「働く」ことについて考え続けた方達でした。
不安や無力感の中で見つけた自分の価値観
スリール(以下、ーー)
本日はお時間をいただき、ありがとうございました。
皆さんはパートナーの海外転勤に帯同することで大きな環境の変化を経験されましたが、それまでの環境から精神的に手放すことが大変だったものはありましたか?
(まきこ)<バンコク、ジャカルタに転勤帯同後コロナ禍で母子先行帰国。現在はフリーランス広報として仕事に復帰>
私はそれまで「仕事をすることこそ社会と繋がること」だと思っていたので、帯同にあたりこれまでの仕事を手放したことで、肩書きがない、そして、収入がないことに堪えました。
収入がない自分、お金は夫に頼ることしかできない状況を情けなく感じることもありましたが、嘆いてばかりいても仕方ないので、”仕事をしないでも社会と繋がるにはどうしたらいいのか?”と発想を転換していくことでその想いは解消できていったと思います。
※まきこさんは現地でメンバーが自分のキャリアを見つめ直すきっかけを作る駐妻コミュニティを立ち上げられました。そのコミュニティは、設立3年半で延べ101名ほどのメンバーが在籍するまでに成長しています。
(なお)<バンコクに転勤帯同。帰国後、外国人労働者を支援する組織にて仕事に復帰>
帯同前は、何かを手放すことに対して抵抗はありませんでした。というのも、私自身子供の頃に転勤が多く、そうした環境の変化に慣れていたからです。
でもいざ渡航してみると、自分の足で立っていない感覚、夫の経済力なしでは生活できない無力感に苛まれました。この想いは同じような想いを持つ仲間との出会いで少しは解消できたものの、正直最後まで完全には消化できなかったかなと思っています。
余談ですが、以前イチローの引退インタビューを拝見してすごく感銘を受けたものがありました。それは、
「海外に行って外国人として過ごす(辛い)経験をすることで、人のことを思いやることができるようになった。自分の未来にとって貴重な出来事だった。」
というものです。まさに私も感じた想いに共感する部分がある言葉でもあり、帰国後の仕事を考える上で軸となった経験でした。
(ちほ)<育休中にバンコクに転勤帯同。帰国後、これまでの職場で復職>
私は育休を利用して帯同したため、手放したものは少ないかもしれません。ただ、帰国後、帯同前と同じ環境に戻るからこそ2-3年現場にいないギャップや置いていかれるのではないか?という不安は常にありました。
また、夫は海外勤務という貴重な経験を終え、順調にキャリアをステップアップしているのに対し、私は今現在仕事と育児の両立で余裕のない状況にあるため、夫に対する羨ましさは今もまだどこかにあります。
(ーー)お話しを伺い、自分の車(人生)のハンドルを自分で握れていない感覚は不安なものだと感じました。では、もしまたご主人様が駐在になったらついていきますか?
(一同)ついていきます!
(ちほ)期間を決めて、または会社を辞めてついていくと思います。
今の会社は同じ場所(会社)でキャリアを積んでいく人が多い環境のため、私のように何回も休職復職を繰り返しながらキャリアを積んでいくことは難しいのでは?と感じています。
今回の帯同を通して、“会社の中で築く以外のキャリアもある”という気付きを得たことは、今後も働き続けるにあたり、「会社に在籍していなければいけない」という考えに縛られなくなる良いきっかけとなりました。
(なお)昨年のコロナ禍で私が夫よりも先に帰国した際は何かあった時に駆けつけられない不安が常にあったので、改めて、家族が一緒に暮らすことが何より大事なことだと感じています。
(ちほ)現実問題として、子供の年齢によって帯同可否が決まることもありますよね。
(まきこ)国により治安のレベルは変わるため転勤先にもよりますが、”海外に住む”という経験は客観的に日本や自分を見る時間にもなり、貴重な経験だと思っています。
また、2020年のコロナ禍で日本でもリモートワークや副職が広がり、働き方が大きく変わったという体感があるので、これからはどこでも仕事はできるのでは?という感覚があることも大きいかもしれません。
(ちほ)昨年からの働き方の変化は、私たちのような転勤族には追い風ですね。
私は個人的に、大企業総合職としてずっと同じ会社で働いていても将来自分の市場価値は今想像しているよりも残らないように感じています。とは言え、今手元にある権利を理由なく手放すことはとても勇気がいることだと考えると、転勤は強制的にそれらを手放すきっかけになりえるとも思います。
ミスを許し、チャレンジを応援できる文化
(ーー)日本とはまた違う価値観に触れる中で、今後も大切にしたい滞在国の価値観がありましたら教えてください。
(なお)語弊があるかもしれないけれど、“謝らない”文化があることが好きでした。最初は驚いたことも多かったけれど、根底にはミスを許し合える空気が流れているのです。
「やってダメだったらどうしよう」ではなく、「とりあえずやってみよう、やってダメだったらやり直せばいい」という雰囲気に助けられたことも多くありました。
(まきこ)私は、小さい子どもがいても肩身の狭い思いをしなかったことが驚きでした。大袈裟かもしれませんが、「子どもを育てていいんだ!」という感覚は日本ではなかなか感じる場面が少ないのではないかと思います。
ジャカルタは人口も多く子どもだらけだったから、日本では子連れだと問題ないか気にしてしまうような場所でも、“子どもがいて当たり前””という雰囲気が流れていたので精神的に助けられました。
(なお)そうですね。皆さんとにかく子どもに優しい!社会で子ども見守る雰囲気は日本との大きな違いだと感じました。
(ちほ)私もなおさんがお話しされていた、人を許す、マイペンライ(タイ語で「問題ない・気にしないで」という意味)文化が素敵だと思いました。日本に帰ってからも思い詰めすぎずに、気持ちのどこかで「マイペンライ」と思う感覚は残っています。
(ーー)心から快く“人を許す”というのはできそうでなかなかできないことですね。
では、“仕事”、“働く”という面での違いは感じましたか?
(ちほ)仕事の面で見ると、一つのところに居続けることに疑問を感じ、積極的に動く人が多いことも日本との違いで驚いたことの一つでした。
(なお)タイはジョブ型(仕事に対して人を割り当てる形)の雇用なので転職がしやすいのかもしれませんね。転職を受け入れ合う雰囲気がどこの会社にもあるように見られました。
(ちほ)今の世の中、逆に日本のようなメンバーシップ型雇用(人に対して仕事を割り当てる形)が珍しいのかもしれませんね。
(まきこ)ジャカルタでは100%専業主婦というお母さんは少なく、学校のママ友の多くは起業してスモールビジネスをされていました。その背景として、彼女達は経済的な心配がないということもあるのかもしれませんが、それでも自分でビジネスを始める逞しさは輝いて見えました。
(ーー) 日本に帰国後、既に次のステップを歩まれている皆さんですが、今でも努力し続けていることや将来の展望があればお聞かせください。
(なお)私は今度は自分が言語の面でも自由の効く立場として、日本で働くことに対して困難を感じている海外の方のサポート、就労支援を続けていきたいと思っています。
そのためには、労務やメンタルケアの知識の勉強を始め、自分の専門分野を作っていきたいと思っています。
(ちほ)最近clubhouseを聴いている中で、自分の持つ専門分野について語れる人の多さに驚かされ、私も“自分”を作っていかないといけないと思っています。
そのためにも、今の仕事にフルコミットしすぎないことに気をつけていきたいと思っています。今回一度会社を離れた時に、このままタスクをこなし続けても自分に何が残るのか分からないこと、逆に視野が狭まるのでは?という危機感を感じた経験も大きいと思います。
もちろん仕事ととしてやるべきことはやらないといけないけれど、業務に関連したことを体系だって学ぶなど、自分のための勉強を始めようと思っています。
(まきこ)私は帯同中に書いていたブログで人と人が繋がった経験からも、情報を発信することで自分の考えを伝えるだけではなく、同じような考えを持つ人たちを繋いでいく役割を果たせたらいいなぁと思っています。
そのために、今後もより言葉を磨き、それぞれの人やサービスの裏側にあるストーリーを世の中に伝えていきたいと思っています。
(ーー)最後に、皆さんにとって「働く」とはどんなことを指すのでしょうか?
(なお)一生懸命、全力で生きるためには必要なものです。
仕事とは、その先に人がいるということ。その人が喜んでくれるといいな、とか、期待してもらえることがやりがいだと感じています。
(ちほ)私は、2つあると思っています。
1つめは、自分の力を持って世の中に還元できる機会。また、その実感を持てることです。
2つ目は、お金を稼ぐ。これはお金を稼げなかった帯同期間があったからこそ思うことなのかもしれません。
(まきこ)私は、自由を得ることだと思います。
それは、収入を得て経済的な自由を得る、という意味はもちろん、帯同期間の中で、必要としている人に何かしてあげたくても自分に収入がないと何もできないという悔しさを感じたことも大きいと思います。
(ーー)ありがとうございました。
さて、前回から2回に渡った座談会も今回が最終回でした。
ご参加いただいた7名の方からは、どんな状況下でも“自分に力をつけていく”という意識を持ちながら、目の前のできることを行動に移していくことでこそ自分らしいワーク、そしてライフが描けていく、というヒントをいただいたように感じています。
不明確な将来に対しての不安と隣り合わせなのは必ずしも転勤族の人に限ったことではなく、多かれ少なかれそういった想いを抱えている方は多いのではないでしょうか?
改めて、「自分がしたいことは何だろう?」と考えてもなかなかはっきりした答えが思いつかない方は、弊社代表堀江著『自分らしい働き方・育て方が見つかる 新・ワーママ入門』の中にあるワークシートが一助となるかもしれません。自分の中にあるモヤモヤの吐き出し方やなりたい姿の整理など、活用方法についてはこちらもご参照ください。
スリールでは、個々人が「自分らしいワーク&ライフ」を実現し、笑顔で働く人が増える社会の実現を目指しています。
また、「子育てをしながらキャリアアップできる人材と組織の育成」をテーマに、講義や擬似体験型ワークを取り入れた実践的な研修を提供しております。
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