コラム

男性育休はなぜ必要なのか? ~男性育休で企業が変わる!企業メリット6選~

公開日:2022.07.28更新日:2023.08.25sourire staff

[目次]

・男性育休の企業メリット6選
 1. 社員のエンゲージメント/ロイヤリティ向上
 2. 社外での企業イメージアップ→ESG投資評価アップ
 3. 社外での企業イメージアップ→若手人材の確保
 4. イノベーション人材の創出
 5. 働き方改善、業務の属人化の軽減、生産性向上
 6. 企業風土改善→心理的安全性確保、離職率低下
・男性育休から多様な社員が活躍する企業へ

改正育児・介護休業法の法改正に伴い、多くの企業が急ピッチで進められている男性育休取得の推進。企業側としては「なぜ男性に育休を取らせる必要があるのか?」「積極的に取得促進しても他のメンバーにしわ寄せがくるだけでは?」と社内でも疑問の声があがり、人事としても対応に悩む…こんな話もよく聞きます。

男性育休は、当事者である社員個人やその家庭だけのものと思われがちですが、実は企業側にこそメリットがあるのです。今回は男性育休取得を促進することで得られるメリットを6つに厳選してご紹介していきます。

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男性育休の企業のメリット6選

1.社員のエンゲージメント・従業員ロイヤリティの向上

男性育休を企業が促進することで、取得社員の会社に対するエンゲージメント(愛着)やロイヤリティ(帰属意識や忠誠心)の向上につながることが挙げられます。

例えば、積水ハウス株式会社が2021年に発表した「男性育休白書2021特別編」※1では、将来的に育休の取得を取得したいと考える男性は全年代全体で6割以上となっており、2019年の調査結果と比べ、増加傾向にあります。また、同調査の育休取得者に対する質問のなかで、男性の8割以上が「家事育児に幸福を感じる」にYESと回答しており、さらにそのうちの5割以上が「会社への愛着が増した」と回答しています。

こういった背景から、積水ハウス株式会社では男性育休の促進に取り組み、いまでは「1ヶ月育休取得率100%」を達成しています。

このように、男性育休を積極的に進めることは、会社に対する愛着や忠誠心の向上、仕事に対するモチベーションの向上に大きく影響しています。

また、モチベーションエンジニアリング研究所の調査では、男性育休取得により従業員エンゲージメントの高さと、企業の営業利益率や労働生産性に相関関係があることが調査結果としてわかっています。つまり、男性育休取得を促進することは生産性、利益アップにもつながっているのです。

[図1]ESと労働生産性(指数)との相関性

ESと労働生産性(指数)との相関性

[図1]出典:モチベーションエンジニアリング研究所「エンゲージメントと企業業績」に関する研究結果より
※1 積水ハウス株式会社発行「男性育休白書2021特別編」より引用:一般層20代〜60代、各年代の一般生活者男女(各200人)計2,000人  合計2,800人

 

2.社外での企業イメージアップ→ESG投資評価アップ

ESG投資とは、従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)に配慮している企業を重視・選別して行う投資のことです。
ESG評価の高い企業は事業の社会的意義、成長の持続性など優れた企業特性を持つと言え、投資家の大きな評価指標になっています。

また、ESG投資とともに急速に認識されている SDGs(持続可能な開発目標)でも、男性の育休の取得推進は、「目標5:ジェンダー平等を実現しよう」に関わる世界的課題となっています。

内閣府が2018年に実施した調査※2では、投資全体のうち、ESG投資の占める割合が「40%以上」と回答した機関が36.1%に上りました。また、ESG投資残高について「1兆円以上」と回答した機関は30.3%となり、ESG投資が日本においても大きなインパクトを持つものであるということがわかります。

[図2]ESG投資の占める割合

ESG投資の占める割合

ESG投資における様々な評価項目の中でも、社会(Social)に分類される女性活躍推進、ジェンダー平等は国際的な関心も高い課題であり、今後国内のみならず海外の投資家からの投資の評価観点としても大きな位置を占めていくことは間違いないと言えるでしょう。

[図2]出典:内閣府「ESG投資における女性活躍情報の活用状況に関する調査研究 アンケート調査」より
※2 内閣府「機関投資家が評価する企業の女性活躍推進と情報開示」4p

 

3.社外での企業イメージアップ→若手人材の確保

積水ハウス株式会社が2021年に就活生400名に行った調査※3では、就活層の半数が「企業の男性育休制度は就活に影響する」と回答しており、就活層の73.8%が「男性の育休制度注力企業を(入社企業として)選びたい」と回答しています。

男性育休を促進することは、当事者である男性育児期社員だけでなく、長期的に働きやすい環境であるかをシビアに見ている就活生や若手社員にとって会社へのイメージに大きく影響する指標となると言えます。

[図3-1]企業の男性の育休制度は就活に影響するか

企業の男性の育休制度は就活に影響するか

 

「図3-2」男性の育休制度注力企業を選びたいか

男性の育休制度注力企業を選びたいか

男性育休の取得率、推進制度といった対外的に公表される情報は、「この会社は多様な人材にとって働きやすい環境づくりに力を入れています」という社内外への強力なメッセージになります。

また、2.で挙げたESGやSDGsの取り組みについては、就活生をはじめとする若年層からの関心も高く、取り組みが進んでいない企業は「遅れている」「考えが古そう」と大きなイメージダウンにつながる可能性があります。

[図3-1][図3-2]出典:積水ハウス株式会社発行「男性育休白書2021特別編」より引用:12pより…[図9-1]企業の男性の育休制度は就活に影響するか/[図9-2]男性の育休制度注力企業を選びたいか
※3 積水ハウス株式会社発行「男性育休白書2021特別編」より引用:就活層…就活中の20代男女(各200人) 計400人を対象にネット調査

 

4.イノベーション人材の育成

イノベーションとは狭義では「技術革新」と訳されることが多いですが、広義では「新しいアイデアから社会的意義のある新たな価値を創造し、社会的に大きな変化をもたらす自律的な人・組織・社会の幅広い変革」と定義できます。

各業界において、新しい価値を創出するためのイノベーション人材の育成は企業にとって大きな課題です。とはいえ、「ではどうすればイノベーション人材が育成できるのか」は明確な答えのない難題でもあります。

経済学者であり、早稲田大学大学院経営管理研究科教授である入山彰栄氏は、「イノーべションには『イントラパーソルダイバーシティ』(=本業とは異なる価値観を持った場に積極的に出ていくことで、自分自身の中に養われる多様性)が必要で、それには社外に出て『知の探求』をすることが重要だ」と語っています。

つまり、企業がイノベーション人材を生むためには、本業とは異なる価値観を持った人が集まる場に積極的に参加させ、社員自身の中、そして社内全体に「多様性」を育む必要がある、ということです。育休を取ることによって得られる経験や、地域でのコミュニティは、長期的に見ればイノベーション人材の育成につながる、と考えられるでしょう。そのためには育休がスキルアップの機会としてきちんと活かせるよう、事前の準備が重要になります。

 

5.働き方改善、業務の属人化の軽減、生産性向上

育休取得者の多くは20代後半~40代の一般社員です。中にはすでに管理職の方もいるかもしれません。そのような社員が育休を取得する、あるいは長期的に家庭と両立していくためは、周囲の理解と、属人的な働き方の改善が不可欠です。

男性育休の促進は、業務の見直しのキッカケとなり、権限移譲による部下の成長機会の創出にもなります。育休当事者としては、自分の業務を洗い出し、同僚や部下の中で引き継げる人材を検討するなど、業務整理と属人化解消につなげることができるでしょう。引き継ぐ部下や同僚にとっては、困難な業務であっても、本来の担当が育休取得期間の間に挑戦させることで成長機会となる可能性も期待できます。

それはつまり、マルチタスクが求められる育児を経験することで、仕事面においても、段取り力や時間管理能力を向上させることができるというわけです。必然的に復職後の生産性は上がり、長期的目線で見た職場全体の生産性向上につながります。

また、子育てを通して職場以外の様々な人と関わることで、多様な人脈が形成され、仕事に良いフィードバックをもたらすこともあるでしょう。育休の取得は当事者自身の組織的、社会的価値を高めることにもつながってくるのです。

[図4]男性の育児休業取得による職場への影響(男性からの回答)

[図4]出典:財団法人こども未来財団「父親の育児に関する調査研究-育児休業取得について研究報告書」(平成23年3月)及び、厚生労働省「男性の育児休業取得促進 研修資料」

 

6. 企業風土改善→心理的安全性確保、離職率低下

育児期社員のように時間や場所などの制約がある社員が活躍できるようにするためには、社員の働き方や制度改革だけでなく、周囲の理解と風土改善が求められます。

今まで当事者やその上司のみが理解しておけばよかった育児支援制度や育児期社員の状況も、若手社員を含む全社員、管理職、強いては経営層にまで広く周知し、全社的に理解と協力の輪を広めていくことが重要となっています。

時間制約のある社員であっても問題なく就業を継続することができる、評価を受けて活躍することができる、ということは、社員全体の「心理的安全性確保」にもつながります。そのような風土の醸成は、育児期はもちろんのこと、将来に不安を抱える若手社員の離職率低下にも直結します。

また、10人に1人の母親がなると言われている「産後うつ」。実は、父親が産後うつになる可能性も指摘されています。成育医療センターの調べによると 11%(母親は10.8%)の父親に実際に産後うつの症状が確認されているというデータも出ています※4

父親の産後うつの原因としては、母親のようにホルモンの影響さえ受けないものの、子どもが生まれる前と同レベルの労働時間に加え、家庭で子育ての負荷がかかることが挙げられています。育児で最も負担が大きくなる時期に父親が育休を取得し、積極的に育児に参加することは、その後の仕事と育児の両立のスムーズなスタートにつながります。

※4 成育医療センターの調べ

 

男性育休から多様な社員が活躍する企業へ

ここまでご紹介した通り、男性が育休を取得することは様々な意味で企業にとっても得られるものがあります。「やらなければならないから…」ではなく、「必要なことだからやる!」と考え、それを応援する空気が流れていくことが、今社会や組織に必要なことです。

男性育休を取得するメンバーも活躍できる環境作りは、介護、女性活躍推進の場面でも活用できます。男性育休を促進することは、今後、企業成長の要となるに違いありません。

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