女性活躍推進コラム

私たちは首相が育休を取得する国になれるのか?

本日(1月15日)小泉環境相が育休を取得する意向を固めたことが報じられました。今回の育休取得議論で改めて注目された「男性(またはトップ)の育休」。国内では様々な議論が挙がっていましたが、この状況を世界はどう見ていたのか、同じく国のトップである首相が育休を取得したニュージーランド国内の反応をご紹介します。

2020.01.15sourire staff

2019年の出生率が政府の読みよりも早く90万人を下回り、想像以上に少子化が急速に進行していることが改めて伝えられた2019年年末。

そんな中、今月にも第一子が誕生する予定の小泉環境相が、3か月の間に合わせて2週間分、育児時間を確保する意向を固めたとのニュースが本日(1月15日)飛び込んできました。参考:小泉進次郎さんブログ

昨年の8月に「育休取得を検討している」と言及した際には様々な議論が上がりましたが、12月には『環境省の職員が働きやすい環境づくりに向けて、1つ1つ課題を解決する努力をしない中で、自分だけが取るようなことはしない』とし、状況次第では取得を見送る可能性もあることを示唆したりと、育休取得までの道のりは簡単なものではありませんでした。

では、一昨年同じく国のトップである首相が育休を取得したニュージーランド国内の反応はどんなものだったのでしょうか?国内では男性(またはトップ)の育休取得が賛否両論を呼んでいましたが、この状況を世界はどう見ていたのか、あわせてご紹介していきたいと思います。

 

『小泉環境相の育休取得議論』周りはどう見ていた?

まず、同じく男性の育休取得率に伸び悩む韓国(男性育休率8.5%,2017年時点)を見てみましょう。韓国では、

小泉環境相が育休に言及することで、出生率の課題について国民の意識を高めるという見方の一方で、まずは男性が育休を取得しやすい環境を作る必要があるとの指摘もある

one of the most promising Japanese politicians can raise public awareness of low fertility by mentioning the issue in a country where parental leave is a rarity. By contrast, others point out that the government should first make a working environment conducive to parental leave.

donga.comより一部抜粋

という客観的な見解と共に、衆議院議員が小泉さんの育休に反対していることにも言及しており、取得議論がスムーズに進まないことについても報じられています。

 

過去には、ウィリアム王子を始め、ブレア元首相やキャメロン元首相も2週間の自宅公務という形での育休を取得しているイギリスでは、

女性が育児(教育)をメインで担うとされている日本では非常に珍しい動き

It was a rare move in a country where women are still expected to lead their children’s education, despite official efforts to improve gender equality. 

BBC.comより一部抜粋

と報じ、日本国内での育児の役割分担が女性によっていることを改めて紹介しています。

ちなみに、イギリスでは法定期間(産後8週目までに1週間または2週間を1回取得することが可能)での男性育休取得率は49%、法定の休暇期間にプラスして有給休暇を取得したのは25%と高い取得率です。(2019年4月時点)

 

個人の権利を大切にすると言われるアメリカでは、

もし小泉環境相が育休を取得した場合は、現役の閣僚では初めての試みとなり、先進国の中で最も恵まれた育休制度の取得を避けてきた日本の父親を勇気付けるきっかけとなるだろう

If he takes paternity leave, it would be a first for a sitting cabinet minister and could help persuade Japanese fathers who typically shun the benefits considered some of the most generous in the developed world.

Bloomberg.comより一部抜粋

と肯定的な報じ方をしている一方で、他の報道では安倍首相が「多くの男性が取りたいと考えていることは理解しているが、実際の職場の雰囲気や環境が取得を難しいものにしている」と発言したことと共に、

日本に古くから根付いている”平日週末問わない長時間勤務文化”を壊すことは簡単なことではない

Japanese work culture is very demanding, with employees putting in long hours late into the evenings and on weekends. Breaking longstanding patterns is difficult for workers,

Bloomberg.comより一部抜粋

と、日本として男性の育休取得率を伸ばすことが簡単なことではないことに触れています。

ちなみに、アメリカは(州や民間企業で採用しているところはありますが)国として「有給の産休・育休制度」は取り入れていないため、米労働統計局によると、有給育児休暇を取得したのは全体の14%でした。(2016年時点)それでも、国で有給育休制度が整備されている日本よりも取得率が高い取得率です。

 

最後に、男性育休取得率を伸ばすために2017年に有給取得期間が2週間に伸びたシンガポール(2017年時点で男性育休率概ね4割程度)では、日本の有給育休制度は恵まれているにも関わらず取得率が伸びない背景として、『顔を合わせることを重要とし、仕事を休むことを良しとしない。そしてそのラインから外れた者は罰する』という協力文化を象徴している、と説明しています。

また、Asics、三菱UFJモルガン・スタンレーでのパタハラ(パタニティハラスメント)裁判を挙げ、日本で父親が育休を取ることの大変さを強調していました。参照:straitstimes.com

 

パタハラを受けた人は5人に1人

日本労働組合総連合会が子どもと同居の男性1,000人を対象に実施した「男性の家事・育児参加に関する実態調査」によると、パタハラを受けたことのある人の割合は全体の20.8%であることが分かりました。具体的には「復帰したら嫌味を言われた」、「責任ある仕事を任されなくなった」、「昇進・昇給できなかった」、「低い人事評価を受けた」など、読んでいて悲しくなる扱いです。前回のコラムでも触れた通り、育休を取得する意思のある男性の比率は増えているものの、未だ周りの理解、対応との間に温度差があることが分かります。

<出典>
「男性の家事・育児参加に関する実態調査2019」,日本労働組合総連合会調べ, 同居している子どもがいる全国の25歳~49歳の有職男性1,000名(2019年9月9日~9月10日)

 

首相が育休を取得したニュージーランド

ニュージーランドのアーダーン首相が2018年に育休を取得したことは、驚きのニュースとして日本でも大きく報じられました。実はこの時はまだ首相に着任して3ヶ月後の懐妊発表とあり、日本では『責任感がない!』と批判されそうなタイミングではありましたが、なんとニュージーランドでは首相の所属する労働党が過去10年で最も高い支持率を記録しました。

また、妊娠公表からおよそ1か月後に行われた世論調査でも、首相の支持率は41%と、妊娠発表前の調査からも4ポイント上昇し、「妊娠していることが支持率を上げているのではないか?」という見方さえ出たようです。首相自身は「妊娠していることが『負の要素』になると思った」とのことでしたが、国のトップであろうと産育休により業務を一時離れることについては全くネガティブに受け取られていないことが明らかとなった結果でした。

実際、30年前には国のトップの妊娠、産休はネガティブに受け取られていました。世界で初めて首相在任中に出産をしたパキスタンのベナジール・ブット元首相は妊娠発表後に批判を受け、出産後は産休を取得することなく復帰していました。

また、ニュージーランドでは同じ時期に首相だけでなく大臣(ジェンター女性相)も出産、産休を取得しています。いずれも出産直前まで自宅勤務、そして6週間(首相)と3ヶ月(大臣)という日本に比べたら短い育休期間でしたが、彼女たちの産休取得によって党の支持率が落ちることはありませんでした。

同じことが日本で起こっていたら、果たしてこのような反応が得られたでしょうか?国際ジェンダーギャップ指数(ニュージーランドは6位、日本は121位/2019年12月時点)の差にも表れているように国民意識が違う部分も大きいかもしれませんが、国のトップメンバーが育休を取ることについて国民の反応が明らかにポジティブなものなのか、賛否議論の末諦めざるをえないかは、同じ時代とは思えない違いだと感じました。

ニュージーランドのクラーク元首相が通信社に送られたお祝いのメールには、こう書かれていました。

(首相の育休取得は)国としての私たちの成熟ぶりと、キャリアと家庭の組み合わせは女性が自由に決められるということを表している

This is a sign of our maturity as a country and its acceptance that combining career and family is a choice which women are free to make

 

国のトップであろうとなかろうと、男性であろうと女性であろうと、彼らに子どもが生まれることを歓迎し、育休をも受け入れられるかどうか‥‥
小泉環境相の『日本って堅いね、古いね』発言は両国の違いを象徴しているように感じました。

 

経営者トップの声も集まる

冒頭に触れた通り、国内でも小泉環境相の育休取得を後押しする流れは署名活動以外にも次々と出てきていました。
その中の一つが、「#もっと一緒にいたかった 男性育休100%プロジェクト」です。男性育休100%に賛同にしている様々な企業のトップが自分の過去の働き方と子育てを振り返り、子育てにあまり関われなかったことを「後悔」とし、これからの働き方について想いを語られています。

参照:Forbes JAPAN 『#もっと一緒にいたかった』  企画:株式会社ワーク・ライフバランス

この動画に出てくる企業以外にも、現在様々な業界から74社もの企業が男性育休100%宣言 *を行なっています。(2020年1月時点
中には既に男性育休100%を実現している企業や、トップポジションの方達が育休を取得している企業もあり、少しづつ、でも確実に世の中の流れが変わってきていることが分かります。
* 男性育休100%宣言とは、株式会社ワーク・ライフバランス(代表取締役 小室淑恵)の声かけの元、男性の育児休業取得率100%に向け目標を持ち、具体的な対策をしている企業の経営者がこれまでの慣習を改革すべく賛同、宣言しているもの。

 

トップが育休を取得すると、機運が広がる

最後に、上司・トップが育休を取得していくことの重要性について興味深い研究結果をご紹介します。
ノルウェーの経済学者によると、周囲の育休取得が取得率の上昇に大きな影響を与えていることが分かっています。ここで注目すべきは、「誰が」育休を取得するのか、で影響力が大きく変わるということ。義理の兄弟や近所の人が取得することでの影響はほとんどありませんが、同僚や実の兄弟が育休を取得すると取得率は11~15%上昇するそうです。
さらに、上司が育休を取得すると、その影響は同僚同士の影響の2.5倍にも上がるとされており、上司が育休取得に積極的かどうかが、周りの取得しやすい(もしくは、しにくい)雰囲気に大きく関わってくると言われています。
参照:独立行政法人経済産業研究所「家族の幸せ」の経済学

これからの日本が、ニュージーランドのように首相(トップ)の育休を受け入れられる国になるのか。小泉環境相の育休取得議論をきっかけに様々な形で注目されるようになり、多くの人が考えたであろう「男性(またはトップ)の育休取得」問題。

小泉環境相の育休取得が追い風となり、数々の推進活動の成果が花開く日を願ってやみません。

 

では、ご自身が育児休業を取る年齢ではなかった場合、上司としてトップとしてどのようなことができるのでしょうか。
より部下の状況を知り、ダイバーシティマネジメントの能力を高める研修が効果的です。

部下のマネジメントを学ぶために有効な体験型「管理職研修」

これからの管理職には、部下の状況を正しく理解し、マネジメントする力が求められます。

そのためのキーワードは、「腹落ちした」「リアルにイメージできた」という経験です。マネジメントする際には、自分と違う相手のことを想像することが大事です。しかし、想像と言っても知らなかったらできません。社員自らが体感し、考えることで具体的なアクションに繋げること体験することが早い習得につながります。

弊社で行っている管理職向けの研修では、「状況理解ワーク」というカードを使ったワークショップを行います。実際に子育て中の社員が16時に子どもの病気で呼び出しをされた際に、どのように調整するかという状況を体感します。実際に「当事者」として、仕事と子育ての間で揺れる焦りや、周囲からの言動に対しての感情を体感することができます。
また、それを体感した上で、以下のことを考えることで現場のマネジメントや働き方の改善に活かしていただきます。

●上司としてできること(マネジメント)

●組織としてできること(働き方、仕組み、風土の改善)

これからの時代は、どの人も仕事とプライベートの両立を考えていくようになります。それが会社にとってプラスになる方向性に仕掛けていくことで、企業としても強固な組織に変化していくことが求められています。

 

スリールでは「子育てをしながらキャリアアップできる人材と組織の育成」とテーマに、講義や擬似体験型ワークを取り入れた実践的な研修を提供しております。
ご興味がある方はぜひこちらよりお問い合わせください。

 

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