女性活躍推進コラム

男性が育休を取る意味をもう一度考えてみよう

昨今、世界中で変化の波が起きている“男性の育休”制度。“お休みを取るだけ”、“数日間だけ”の「なんちゃって育休」も話題になりましたが、そもそも男性が育休を取得することで誰にどんなメリットがあるのでしょうか。今回は、男性が育休を取得する意味について考えてみました。

2020.11.25sourire staff

男性育休に対する世の中の流れ

皆さんは、2015年時点で厚生労働省が掲げていた2020年の男性育休取得率の目標値を覚えていますでしょうか?

− 当初、掲げていた数値は”13%”でした。

では、昨年2019年の取得率はどうだったかと言うと、過去最高値ではあるものの目標値の半分程度の7.48%に留まっています。そこで、昨年末には目標値を『2025年に取得率30%』として掲げ直しています。

今年1月に小泉環境相が育休をしたことが大きな追い風となると考えられてはいるものの、未だ目標値に達するには長い道のりです。

出典:厚生労働省調査「令和元年度雇用均等基本調査」

男性の育休といえば、9月にフランスで「父親休暇」が義務化されたことが話題となりました。

出産前後に父親が取れる産休率が7割と言われるフランスでも雇用形態によって取得率の差があることから、今年9月「父親休暇」をこれまでの2週間から4週間に延長し、かつ1週間を義務としました。

日本同様、「育児は母親が中心」という価値観の強いスイスでは、これまで父親の育休を認める法律はありませんでしたが、今年9月の国民投票で父親に2週間の育休を法的に定めました。

カナダのケベック州でも2006年、男性だけが取得できる育休を5週間設けるといった改革をし、男性の育休取得率がそれまでの21%から75%へと上昇したと言われています。

女性の社会進出、そして少子化対策の一手として、日本だけでなく他の国々でも男性育休制度の見直しがされ始めています。

 

 では、日本では?

日本でも男性の育休取得率を伸ばす策として、様々な制度が用意されていることをご存知でしょうか?

パパママ育休プラス

母親だけでなく父親も育児休業を取得する場合、休業可能期間が1歳2ヶ月に逹するまで2ヶ月分延長される制度(育休は本来1歳までの取得)

出産後8週間以内の父親の育休取得の促進

配偶者の出産後8週間以内の期間内に、父親が育児休業を取得した場合には特別な事情がなくても再度の取得が可能となる制度

出典:厚生労働省「男性の育児休業の取得状況と 取得促進のための取組について」

これに加え、来年度はついに、現在は母親にしか取得が認められていない産休制度を出産直後の父親も対象とする新たな休業制度(男性の産休制度)を創設する予定があることも先日報じられました。

また、男性の育休取得が進まない背景に収入が減ることへの懸念があることをふまえ、休業中の給付金を育休のものよりも手厚くし、家計の収入減を抑えることも検討されているようです。

 

この記事を読んでくださっている皆さんは「なんちゃって育休」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。

これは、男性の育休取得者の多くが5日未満という短期間という調査結果を表現したものです。

平成27年度の比率(56.9%)よりは5日以上の取得比率が増え、5日未満の取得率は減っているものの、未だ5日未満の取得率が一番高く(36.3%)、2週間未満の取得率が全体の7割を超えています。

出典:厚生労働省「平成30年度雇用均等基本調査」(事業所調査結果概要)

上記の”父親の産休”が制度化された暁には、出産前から産後の身体的にも精神的にも大きな負担がかかる時期に一緒に向き合うことで、その後の子育てを決して他人事ではなく共に取り組めるきっかけにもなりうるかもしれません。

自らを”子育てのサポーター”ではなく”子どもの父親”という自覚を持てる機会があること、更には収入も保証されることで「なんちゃって育休」にも変化が現れるかもしれません。

また、度々問題となる母親の産後うつの原因として、一般的に知られている「ホルモンの急激な低下」のほか、パートナーや家族からのサポートの不足」や「パートナーの不在などから生じるストレス」などもあると言われています。海外の研究でも、パートナーが乳児のケアに関与しないことが、母親の産後うつと関係していると言われているものもあるように、体力的にも精神的も負担の大きな時期に一緒に支え合うことは想像以上に意味のあることだと考えられるのではないでしょうか。

出典:MSDマニュアル家庭版

 

父親も産後うつ

男性の育休を推進することと同時に重要になってくるのが、父親のメンタル健康管理です。

10人に1人の母親がなると言われている「産後うつ」。実は、父親も産後うつになる可能性もあり得ると言われています。

成育医療センターの調べによると11%(母親は10.8%)の父親に実際に産後うつの症状が確認されています。

原因は、母親のようにホルモンの影響さえ受けないものの、子どもが生まれる前と同レベルの労働時間に加え、家庭で子育ての負荷がかかることだと言われています。

子どもの性格や気質によって大変の度合いに差はあるものの、生まれたばかりの100%ケアが必要な子どもを育てることは生半可なことではありません。

男性育休取得率の数字にのみ注目し、働き方や制度が変わらないことには父親側に無理が偏りかねません。

そして何より、精神、肉体共に父親の健康状態は母親、そして子どもにも大きな影響を与えます。父親も母親も共倒れになる前に、子育て中もフレキシブルに働ける制度や、それにより昇給などが影響を受けない規定も必要となってくるのではないでしょうか。

また、母親は乳幼児健診や保健師の訪問、病院での予防接種など、子育ての専門家と関わる機会があるのに対し、残念ながら父親はあまりそういった機会がありません。調子が悪いな、と感じても個人の判断で受診することは勇気がいるため、産後うつの症状を早期発見するためにも、もっと父親が家族や会社以外で子育てについて相談できるポイントがあっても良いのかもしれません。

 

男性が育休を取得するメリット、本当のところ

以前のコラムでも触れた通り、日本の男性の育休制度は世界の中でも最も恵まれているとされています。

一方で、なかなか取得率が伸びない背景として、男女共に持つ「子育て=女性の仕事」という分業意識の他、数値化しずらい職場の雰囲気・制度の影響もあると見られています。

『男性の育休』をどう思いますか?〜他国比較から考える取得率が伸び悩む背景とは

ここまで男性育休を後押しする制度や世の中の流れをご紹介してきましたが、父親が子育てに関わる「時間」は政治(制度)主導で、それを支える「労働・精神環境」は各々の企業、そして個人主導で整備していくことがまずは必要なのかもしれません。

 

最後に、男性が育休を取得するメリットは男性側の父親意識の醸成、産後女性の負担減以外にもあることをご紹介します。

アフラックでダイバーシティ推進部長を務める岡本文子さんは、「男性が育休を取得することは、育休中の経験がスキルやマネジメント能力の向上など自身の成長につながる」と説明されています。

それはつまり、育児を経験することで仕事の段取り力や時間管理能力が向上することで復職後の時間当たり生産性が上がるので、長期的目線で見ると職場全体の生産性が上がるということ、また、子育てを通し職場以外の様々な人と関わることで、多様な人脈が形成され、生活者目線を身に付けることで仕事に良いフィードバックをもたらすこともあるため、育休の取得は自分自身の組織的、社会的価値を高めることにつながるということです。

出典:日経DUAL「もうパパを尻込みさせない 男性育休取得率3.16%」

また、下記の男性の育休取得者がいた職場でのアンケートでも上記と同様の変化が報告されていました。

出典:財団法人こども未来財団「父親の育児に関する調査研究-育児休業取得について研究報告書」(平成23年3月)及び、厚生労働省「男性の育児休業取得促進 研修資料」

それ以外にも、会社に対する満足度・帰属意識の向上、従業員の多様な事情に配慮した制度の導入、取組実施により、離職率が低下など、個人だけでなく会社にとってもメリットがあることが明らかになっています。

 

また、女性の愛情曲線は「夫が一緒に子育てをするかどうか?」で将来的に愛情が回復するか否かが決まると言われています。

どの女性も子どもが生まれると愛情のトップが「夫」から「子ども」へと移るものの、「夫と二人で子育てした」と回答した女性たちの夫への愛情はその後回復し、「私一人で子育てした」と回答した女性たちの愛情はその後回復することなく低迷の一途をたどります。
 

出典:東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス 研究部長. 渥美由喜著「夫婦の愛情曲線の変遷」

今、世界中で見直される男性の育休制度、日本でも度々話題に挙がる男性の育休取得。これが一時のブームとなってしまってはあまりにも残念なことです。

これまでご紹介した通り、男性が育休を取得することは様々な意味で得られるものがあるということ、延いては「必要」なことだと思え、社会にもそれを応援する空気が流れていくことが、今必要なことだと私たちは考えます。

そしてこの問題は育児だけでなく介護にも同様のことが言えてくるのではないでしょうか。違ったバックグラウンドを持つ人同士の違いを認め、互いに協力していくことが女性の社会進出、男性の育休取得など、全ての課題の原点に思えてなりません。

 

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